烏賊(いか)のうまさが心に沁みるようになったのは、30歳に限りなく近付いてからだ。子供の頃は「味も素っ気もない」「ガムみたいな」「噛み切れない」、この食べ物を決してうまいとは思わなかった。しかし、アオリイカの握りの甘さに感動し、活きイカの造りの食感にむせび泣き、ホタルイカの沖漬けで絶倒し・・・。世の中にこんなにうまいものがあったとを思い知ったのだった。
今では耳の部分の刺身が大好物。咽喉から食道に落ちても尚、存在を主張してくれる気合の入ったうまさだ。
● ● ● ●烏賊いかイカのうまさの秘密●
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いかのうまさの正体・・。これを一口で表現するのは至難の業だ。まずは食感。種類によって食感の楽しみも随分違う。コリコリッという歯応えが自慢のやつ、ねっとりした食感で品格を主張するやつ、つるっという咽喉越しのやつ。柔らかくてとろけるやつ、と様々だ。肉の厚さもおいしさに大きく関係するから面白い。そして風味、生のやつなら上品な甘さを楽しみたい。煮炊きをすれば独特のうま味が引き出され、焼けば香ばしさが加わる。イカのうまさは筆舌に尽くし難い。こうと説明できる言葉が見当たらない、たおやかで微妙なうまさ加減だ。料理の向きは、やはり活き造りが一番うまいだろうか、塩辛や沖漬けも忘れてはいけない。透き通ったイカソーメンも捨てがたい。煮付けもいいし、炒めても揚げてもうまい。胴体の他にも、うまさ行列。腸(わた)は最高、耳はカリコリ、下足のうま味は濃いし、墨だっって食べちゃう。春から初夏にかけてのホタルイカ、夏場が旬のアオリイカは別格としても、今はヤリイカがうまい季節、春にはスルメイカ、夏は剣先イカ。とにかく一年中楽しめる。ああうまいかな、烏賊!
● ● ● ●河太郎の妙技に乾杯●
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呼子の「河太郎」に初めて行ったのは8年前、女将との新婚旅行が最初だった。それ以来、2〜3年に一度のペースで訪れているが、最初の感動が醒めないという点では、驚異的に満足度の高い店だ。娘「咲良」はここの板場を覗くのが大好きだ。完璧な流れ作業で、活きたイカがどんどん舟盛りの中に並んでいく。店の中央の生簀でイカが優雅に泳いでいるのも格別。シズル感ズルズルで待っている時間もまた楽し。舟盛りになって出てきた時には、むろんまだ動いている。もう食えないというほど、活き造りを堪能した後は下足と耳のてんぷら。これまた後を引くうまさで、あっっという間になくなってしまう。料理も店員の動きにも全く無駄のない店だ。
● ● ● ●イカ料理あれこれ●
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イカの一夜干しをさっと炙って食べる幸福は日本人ならでは。誰にも教えたくない贅沢だ。堅いスルメを手で裂いてよく噛めば、口中にうまさと甘さがもんどりを打つ。スルメは松前漬けにも欠かせないし、キムチとして漬けてもうまいもの。この他には、胴体にもち米を入れて炊き上げた「イカめし」、縁日屋台でお馴染みのイカ焼き、お好み焼きは何故かたこでなくイカがあう。いか徳利なんて渋いやつもいましたね。福岡の新しい名物「イカしょうまい」も最高。味噌やねぎと和えてぽっぽ焼き、下足を胴体に詰めて鉄砲焼き。醤油に味噌、しょうがにも良くあう。わさびやタバスコもいいが、くせのない味だけに、辛さは引き立つ。イカ墨のパスタにリゾット、地中海でもコウイカを良く食べる。にんにくやオリーブオイル、アンチョビにもよく馴染む。香草や香辛料とも相性抜群。中国料理では、何故かいつも見事な「松笠切り」や「鹿の子切り」でお目にかかる。和洋中なんでもござれのイカパワー。
イカ喰い日本人としての究極の食べ方としては、カラス(イカの口)の乾物、さきイカ、駄菓子屋にあった酢イカの数々も忘れてはならない。
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