旦那の居場所第47回 「にら」礼賛

「にらレバ」炒めといえばスタミナ料理の代表選手、精力増強・疲労回復には欠かせない。学生時代にはこれで大盛りご飯を平らげた。にらと言えばあの食感がたまらない。茹でても、炒めても、口の中で噛むごとにバリバリと音を立てるから、その音だけで豪快な感じがしてしまい、いかにもスタミナがみなぎってくるような錯覚に囚われる。中でも最高の食感を誇るのが根もとの太くなった色の薄い部分、ここだけを炒め物にしてバリバリと食べるのが、いつかは叶えたい、僕のささやかな夢でもある。

それにしても、この野菜、醤油、みそ、しょうが、にんにく、コショウ、からし、バター、ポン酢しょうゆ・・何故かありとあらゆる調味料や香辛料との相性が抜群だから侮れない。一年中、手に入るが、この時期のにらは、みずみずしくて、しなやかで、とりわけ食欲をそそる。


● ● ● ● にら、黄にら、花にら ● ● ● ●

岡山に住んでいた頃は黄にらをよく食べた。黄にらは岡山の特産だ。日光を当てず軟白栽培したものだから、柔らかくて甘みが強い。東京で買ったらひと束300円もする高級食材、あの超高級店「ざくろ」のしゃぶしゃぶには、いつも必ずこの黄にらが入っているのを思い出す。岡山では、やわらかい白魚と一緒にこの黄にらを卵とじにして堪能した。

花にらはやはり中国料理の定番食材、やわらかい花茎とつぼみがおいしい。にらより臭みがなくマイルド、歯触りと甘みを楽しむ。にらが手に入りにくかったマニラでは、時々この花にらで代用したが、ここのはワイルドに栽培されたものなのか、すさまじく硬かった。にらは鍋にも不可欠の素材、きゃべつとニラ、にんにくと鷹の爪をたっぷり入れたモツ鍋を最初に食べた時の感動は忘れない。


● ● ● ● にらのおいしさ、にらの効能 ● ● ● ●

にらのおいしさは、1に香り、2にシャキシャキ感、3にうま味。炒め物でも鍋物でも、にらが入るだけで風味が格段に向上する。この香りのもとは硫化アリル、ビタミンB1の吸収を高め糖の分解を促進するので、豚肉と一緒に食べるとビタミンの吸収効率が高まるという、まさに「レバにら」の組合せは科学的にも合理的な根拠があるわけだ。抗酸化作用もあり、血行を良くして身体を温め胃腸の働きを助けるので漢方薬としても使われる。滋養強壮には欠かせない、まさに元気になりたい時の必須野菜と呼びたい。

■■■ ・・ホントにうまい にら料理あれこれ・・ ■■■

「ニラと切り干し大根のキムチ」
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生でバリバリ食べるニラの食感はまた格別だ。切り干し大根も同様、煮つけても良いが、水で戻したものをバリバリとサラダで食べるのは実にうまい。この「生食抜群食感2兄弟」をキムチにしてもりもり食べようというこの料理、ビールがススムこと請け合いの前菜。

ニラは4等分にざく切り、切り干し大根は水で戻して水気を切る。保存容器に大根、ニラ、乾燥桜えび、市販のキムチの素の順に重ねていく。これを3~4層、積み上げれば完成。あとは冷蔵庫で2-3日したら食べ頃。

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「にらのじゃがいもジョン」
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韓国には「ジョン」とか「チヂミ」とか呼ばれる大そう美味い料理あり。チヂミ
は小麦粉を使う地方の庶民料理、ジョンは上新粉を使う宮廷料理などという説も あるものの、日本人の私にとっては同じ料理のようにしか思えない。しかるに、 カムジャジョンというじゃがいもをベースしたジョンは、なるほどこれは普通の チヂミとは異なる食感が最高。この「にらのじゃがいもジョン」、まさにこのカ ムジャジョンの応用です。

ニラは3等分程度に大き目にざく切り、じゃがいもとやまいもは同量を生のまますり卸して、ほんだしと一緒に混ぜる。ホットプレートに薄く油をひき、にらを載せたらすぐに生地をかけて両面をこんがりやく。しょうゆやポン酢であっさりと頂きます。


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「にら玉丼」
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ニラの卵とじ、ニラとたまごの味噌汁など、にらと玉子の組合せは本当においしい。これにビタミンB1の豚肉を組合せ、スタミナ抜群、それでいて、あっさりの丼。梅雨の季節の体力回復、風邪の予防にどうぞ。

ニラは3センチ程度にざく切り、鍋にめんつゆを熱して豚バラのスライスを茹で、にらを入れたらすぐに玉子をほぐしかけて火を止め、あとは余熱で半熟トロトロになったらご飯にかける。ベジタリアンなら豚肉のかわりに油あげを使ってもおいしい。




今回はにらのおいしさについてでした。 にらは英語でChinese chive、中国では紀元前から栽培されていたという。日本でも中国料理の普及とともに一般に広まった。カロチン、ビタミンB1・B2・C、カルシウム、カリウムに富む。良いことずくめのこの野菜、その割には2束100円、3束100円など、もやし並の値段で手に入る。

にんにく同様、食べた後の臭いを気にする方もいるけど、加熱の方法によっては臭いもうまく対処できる。餃子やニラ饅頭など点心にも欠かせない素材、最近はニラ入り、ニラ抜きを選べる餃子屋さんもあるが、ニラ抜きを頼んだら、なんだかもの凄く損した気分になってしまうというから、ホントににらの魅力とは不思議なものです。

2010年5月 本橋 弘治 copyright by Hiroharu Motohashi
参考文献:食材図典(小学館)、もっとからだにおいしい野菜の便利帳(高橋書店)

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