|
「今日はビフテキにでもするか!」子供の頃は、父親の一声に狂喜乱舞したものだった。
家でナイフとフォークを使う御馳走は、この「ビフテキ」以外には登場しない。 それにしても、何故か「ビフテキ」といった。牛肉に対する特別な価値観が
当時の日本にはあったのだ。外食では、高価で手の出ない料理。お買い得の肉を それでも奮発して買ってきて、大騒ぎした。 なんでも兼用の家庭のフライパンで焼くのは至難の技。「ステーキはレアに限る」なんて
言いながら、父親はまだ中が冷たい肉を美味そうに食べていた。
● ● ● ● 「ステーキ美味いかな」
● ● ● ●
世界で一番美味いステーキハウスをご存知か?ニューヨークはブルックリンの
ピーター・ルーガー・ステーキハウスを置いて他にない。 ここのTボーンを食べたいだけで、命からがらブルックリン橋を越えたのは、3年前の春。
期待をはるかに絶するTボーンステーキのうまさに脱帽。 これはどうやって焼いたのか?オーブンは何度か?どのくらい大きいオーブンがあるのか?
たどたどしい英語で質問攻めにされて、これにはベテランの 接客のプロも相当閉口していた。 USビーフは硬い、臭いが気になる、ジューシー感がない。今までの固定観念は吹き飛んだ。
表面はカリッとクリスピー、中はジューシー、噛むほどに肉の旨味が口中に広がる。 分厚く白い器にたまった肉汁をつけながら、ヒレとサーロインをTボーンから交互に切りとって
口に運ぶ。まさに至腹?のひととき。この国の人間はこんな美味いものをいつから食っていたのか?
● ● ● ● 「ステーキのこと」
● ● ● ●
思えばステーキという料理。極めてラジカルで原始的。肉を切り分けて焼くだけ、
料理の原点だ。家庭では肉をサーブするのは、男性の仕事。狩猟時代の名残は 今でも西洋のマナーの中に残っている。 さて、調理法。鉄板で焼く。網で焼く。または、オーブンなどでローストする。
熱源は?電気、ガス、炭火。 程よく脂を抜いて!そんなことしたらもったいない! ソースは?塩・胡椒だけ?それも片面のみ? 思えばステーキという料理。極めて繊細で、奥が深い。肉を切り分けて焼くだけ、
料理の芸術だ。 良質の蛋白質と同時にビタミンA、B1、B2の補給には最適、古人の知恵か偶然か?
|