旦那の居場所  

居酒屋のおやじを夢みて−

居場所 4k


女将のダンナは「惣菜管理士」というあまり知られていない資格を持っている、 ただのサラリーマン。とにかく大の料理好き!・・で、このお店を間借りさせて あげることにしました。名づけて「ダンナの居場所・・居酒屋のおやじを夢見て」
これからも色々な素材を取り上げていきますのでお立ち寄りください。


盛り塩、打ち水、木の格子。敷石、玉砂利、ししおどし。引き戸をあければカウンター。 ここは住宅街の駅前・・はずれ。

「お帰りなさい」なんて野暮な言葉はかけないで。 料理の手は休めず、「いらっしゃい」やさしい目だけが笑ってる。居酒屋のおやじを夢見て、 今日も食を愛で、食を楽しむ・・ダンナの居場所。


その第11回は・・・・

  「旅にしあれば旅の味」礼賛  

有田・唐津編 女将の仕入れに同道する半年振りの九州への旅、旦那の目的は「うまいもの」。 3月の3連休は、土、日、月。既に、いつの昼はどこで、この日の夜はここで、と当たりはつけてある。 もちろん、「定休日」なんてことのない様、事前確認済み。 行き当たりばったり、嗅覚だけで「うまいもの」を探すのも旅の楽しさだが、 ここにいったらこの店に必ず行く、というのも、またいいものだと思う。

 

上海飯店の厨房 最初の出会いは1年前。風邪気味で食欲のない娘、咲良に中華ならと思って飛び込んだ店だ。 この時、咲良は食欲不振を返上、皿うどんと中華丼を馬鹿食いして、一気に回復した。

有田の国道沿いにあるこの店は、いつ訪れても、地元のお客さんでいっぱいだ。 チャンポン、皿ウドン、炒飯。ベーシックメニューがとにかくうまい。安い。そして 量がある。1人前を2人で食べるお客さんもかなりいる。お店も心得ていて、 料理の数だけ、人数分の取り皿を出してくれる。 客席はほとんどが、畳にこたつ。なんとも、家庭的な雰囲気だ。 うまさの秘密は、あっさりとした味付け。そして、具がたくさん。野菜の食感がまた絶妙。

ここの厨房は物凄い。なにしろ、一人前の量が多いから、特大の北京鍋でガンガン作る。 どのメニューにもたっぷり入る野菜は、一口大で山の様に積まれている。 「中華丼のご飯を!」「二番にスープとサラダ!」鍋を振りながらも、旦那さんの指示が飛ぶ。 今回は、焼き餃子に、2人前ずつもあろうかという特製チャンポン、特製皿ウドンをペロリ。おにぎり3つ(咲良の分も)を つけてくれた。腹十二分目まで食べるが、何故かモタレナイ。

 

龍水亭の鯉の洗い

ここは、昨年仕入れの時に、窯元さんから教えて頂いた。龍門ダムの湖畔、最も奥にある川魚料理の老舗。 大正10年開業、当代で3代目、脈々と受け継がれた素朴で本物の味が楽しめる。 今回、初日の夕食は「龍水亭」と定め、数日前から予約をしてある。 店の入り口付近に湧く「龍門の岩清水」で口を清めると、もうヨダレが出てきてしまうパブロフの犬状態。 とにかく、鯉がうまい。「鯉とはこんなにも、うまいものだったのか!」まさに初鯉の味である。

鯉を龍門の名水で泳がせ、味が充実し、臭みが抜けたところを見計らって、調理をするからだろうか。 洗いにすれば、テキメンに、この鯉のうまさがわかる。臭みがまったく無く、かりりんと身が締まり、それでいて、しっとりした舌触り。 これをじっくり醸造した自家製の味噌で作った、とびきりうまい酢味噌で食うから、これはもう 気絶しそうになる味わいだ。

にこれまた、自家製の柚子こしょうを酢味噌にちらっと混ぜると、 今度は一層、鯉の鮮烈さが浮き立つ。 洗いに向く海の魚も多いが、しつこすぎず飽きない分だけ、鯉は、一段と格調が高い。 洗いもうまいが、鯉こく、鯉の唐揚げに柚子あんをかけたもの(=これはおすすめ)、鯉のうまさを 思い知る。

これに、やまめの塩焼き、うなぎの蒲焼きがついたコースで、5000円弱だというので また「びっくり」である。

 

 

 

メニュ−

嬉野の隠れ宿 今回、初日の宿は、嬉野の観光ビジネスホテル別館山水。 「龍水亭」でゆっくり夕食を摂ってからチェックイン。 このビジネスホテル、築も経ており、過分の設備、サービスはない。 が、しかし、隣接する名旅館「山水」の大岩風呂が無料で使える。 嬉野の湯は、お肌しっとりの美人湯だ。 ツイン9200円に朝食一人1000円の格安、明朗会計なり。 朝食も、温泉玉子や湯豆腐、焼き魚にサラダ、明太子までついて1000円とは。

 

有田の紀文鮨 新婚旅行で初めて暖簾をくぐった思い出の店。とにかく、アオリイカのうまさにびっくり仰天した。 九州産の、くどくない、小ぶりで甘く、キメの細かいウニにも舌鼓みを打った。 ネタの大きさもシャリの握り加減も絶妙のイナセな江戸前風。粋な握りが楽しめる。 しかも、握りやつまみは、染め付け、青磁、白磁、赤絵・・の名品で供される。 今回も2日目の昼に立ち寄った。旦那さんの変わらぬ笑顔にホットする。 女将は午前中、意中の窯元と商談成立で上機嫌。 器の町・有田では、遠来の商談客をもてなすニーズか、寿司屋の激戦区。レベルが高い。

 

唐津に洋々閣あり 2度目の洋々閣。最初は新婚旅行。あの時は改装中で休館だったが、どうしてもと 泊めて頂いた。泊り客は、当方一組だけだった。 今回は、全室満室。人気の高さが窺い知れる。 さて、ここは、名物「ざる豆腐」で知れた、料理が自慢の唐津の老舗。中里隆氏の器で供されることでも名高い。 お味は、一皿一皿に細心の仕事が施してあって感心する。湯布院あたりの宿で受けている、 素材感のある、野趣に富んだ料理とは対局にある料理。堅苦しさもあるが、変わらぬ伝統の重みを感じてしまう。

味付けは全般的に、昆布のうま味が強く、かつおの風味などは敢えて抑えて素材の風味を慈しむ。 満足度の高さでは朝食だ。ざる豆腐、ちりめん山椒、昆布の佃煮、卯の花、鯖の塩焼き・・。 これで、麦粥を何度もお替わりする。 最後に香の物と煎茶で締めくくる。九州のお茶はどこで飲んでも本当にうまいが、隆太窯の湯呑みで 頂く「洋々閣」の朝のお茶はまた格別である。

 

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旦那の居場所、今回は「旅にしあれば旅の味」有田・唐津のおいしさについてでした。 何故、旅先で食べる物はこんなにおいしいのでしょうか? 旅にはずむ心も一因ですが、水、空気、温度、湿度。その土地の食べ物は その土地の風土に根差しているからではないでしょうか? そして、やはり、地元で取れる素材への、地元の人々の愛着と慈しみ。 鮮度や食べ方の工夫に感心する前に、愛情を感じる訳であります。 広島から片道4時間の道のりでも、すぐにまた行きたくなるというから、 本当に有田・唐津の魅力とは、不思議なものです。 (99年3月 copywright hiroharu motohashi)

有田 中華料理 上海飯店 0955−42−3901

竜門峡 川魚料理 龍水亭 0955−46−2155

嬉野 観光ビジネスホテル 別館山水 0954−42−1150

有田 紀文鮨 0955−42−2535

唐津 洋々閣 0955−72−7181

 

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