旦那の居場所  

居酒屋のおやじを夢みて



居場所 4k


女将のダンナは「惣菜管理士」というあまり知られていない資格を持っている、 ただのサラリーマン。とにかく大の料理好き!・・で、このお店を間借りさせて あげることにしました。名づけて「ダンナの居場所・・居酒屋のおやじを夢見て」
これからも色々な素材を取り上げていきますのでお立ち寄りください。


盛り塩、打ち水、木の格子。敷石、玉砂利、ししおどし。引き戸をあければカウンター。 ここは、住宅街の駅前・・はずれ。「お帰りなさい」なんて野暮な言葉はかけないで。 料理の手は休めず、「いらっしゃい」やさしい目だけが笑ってる。居酒屋のおやじを夢見て、 今日も食を愛で、食を楽しむ・・ダンナの居場所。

その第32回は・・・・

  トマト礼賛  

学生の時分、トマトは夏のおやつだった。箱ごと買い冷蔵庫に補充。 喉もからから、遊びから帰ってきて、冷えたトマトを丸かじりする時のうまさ! 大人になってからの「ビールの最初の一杯」にも勝る至福の癒し。 かぶりつけば、じゅわっと果汁がほとばしり、まだ泥で汚れた手と顔が濡れる。 トマトの青臭さと手指の泥くささ、夕立のほこり臭さ、懐かしくも遠い、子供の頃の夏休みの臭いだ。

● ● ● ● いろいろなトマトたち ● ● ● ●

じめてミニトマトを見た時の感動は忘れられない。かつては機内食用に作られていたものだったとか。 とにかく、可愛くて、とても高くて、ちゃんとトマトの味がする小さな野菜。 そんな可憐なミニトマトに出会ってから、かれこれ20年くらいになるのではないか。 「完熟」という言葉はいつ頃から使われ始めたのだろう。 「完熟トマト」なるものを初めて食べた時のあの甘さの感動は忘れられない。 「え? ということは今まで食べていたのは熟していないトマトだったの?」となにやら不思議に思ったもの。 品種の進歩か、輸送の進歩か、株上で完熟したトマトも毎日買える値段で手に入るようになったのはありがたい。

「冷やしトマト」は最高の夏のつまみ。不思議と居酒屋では「くし切り」でマヨネーズ。 これがビストロやトラットリアでは「スライス」でドレッシングになる。 家庭では「トマトの輪切り」に何をかけるか。醤油と塩、醤油と砂糖、何故か塩派と砂糖派に分かれるようだ。 塩はトマトの風味と酸味を強調し、砂糖は甘さを増やしてマイルドな味になるようだ。

タリア語では「ポモドーロ」。直訳では「黄金の果実」。トマトはイタリア料理には欠かせない。 少し先の尖った細長い真っ赤な奴で、「サンマルツァーノ」「ローマ」種が代表格。 パスタ、ピザ、煮込み料理、とにかくオリーブオイルやニンニク、バジルとの相性は抜群だ。 トマトのうま味がイタリア料理の隠し味であることに間違いはない。

● ● ● ● トマトうまさの秘密 ● ● ● ●

マトのうまさは、何と言っても、あの酸味と甘みの好対照だ。酸味の主成分はクエン酸。 かぶりつけば、皮が裂けると同時にゼリー部がじゅわっと飛び出し、種のつぶつぶが舌に残る。 酸味や甘みに劣らずうま味も強い。果肉が緻密で締まったものほどおいしい。 トマト臭さや皮の硬さは好みによるだろう。 料理のプロがトマトを使う時は、皮を湯むきし、種を取ることが多い。 何故そんな手間をかけるのかが不思議な方は、一度お試しあれ。 皮を剥いたトマトは舌に優しく口に清々しいし、種を取り除いたトマトには苦みが残らない。 取り除いた種だけを食べてみると、種が如何に苦いものかよくわかる。 特に、缶詰のホールトマトなどは種を取りたい。トマトソースなど作れば、この手間の差は 味に如実に現れる。 夏の間はうまいトマトを、とにかくたくさん食べたい。きりりと冷えた夏野菜の王様、ああ本当にうまいかな、トマト!



・・家庭でもほんとにおいしい、トマトアレコレ・・

この季節、「冷たいトマトのパスタ」が最高だ。5歳の娘はこのパスタが大好きで、 どこのイタリアンで食べるパスタよりも、パパの冷たい赤いパスタがおいしい!と言ってくれる。 2種類以上のトマトを使うのがコツ。ソースは予め作り冷やしておけるので、夏のパーティーにはうってつけ。

「冷たいトマトのパスタ」

オリーブオイルで、玉葱のみじんぎりを炒め、種を取り除いた缶詰のトマトを注ぐ。 月桂樹の葉を入れてしばらく煮込む。この基本のトマトソースは万能選手。 この基本のソースに、炒めたにんじんのみじん切り、茄子、しめじか椎茸、セロリを入れて 塩で味付け、ソースは完成、ステンのボールに入れて良く冷やす。 別にフレッシュのトマトをざく切りにし、ボールに入れて、塩、オリーブオイルを振りかけ良く冷やす。 細めのロングパスタ(1.5〜1.7o程度)を少し柔らか目に茹でて冷水に取り、水切りの後、 オリーブオイルと「アジシオ」で和える。これに良く冷えたトマトソースとトマトのざく切り、ちぎったバジルをかけて出来上がり。 2種類のトマト、パスタそれぞれに塩味をつけるため、しょっぱくなり過ぎないように注意。 冷たいパスタは後から塩味の追加が可能だから、最後に味を見てから仕上げを。


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思いっきり甘いフルーツトマトはシンプルに食べたい。モッツアレラのスライスと合わせても良い。 しかし、この料理、シンプルだからこそ、モッツアレラの質と状態に左右されてしまう。 特に甘い完熟のフルーツトマトなら、むしろ、絹ごし豆腐との相性が良いだろう。

トマト、豆腐、ドレッシングはそれぞれ良く冷やしておく。 フルーツトマトは良く切れるナイフでスライス、絹ごし豆腐も、同じ大きさ、厚さにスライス。 冷たいドレッシングをまわしかけ、バジルの香りを楽しみながら召し上がれ。 ドレッシングは、玉葱の粗みじんをサッとオリーブオイルで炒め、醤油、酢、砂糖で調味したもがよく合う。


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贅沢で夏向きのあっさりしたラーメンは如何? トマトの酸味が食欲をそそる「夏のミニトマト湯麺」

「夏のミニトマト湯麺」

夏だからラーメンスープは自分で作らず市販の「スープ付きのチルドの生麺」を活用したい。 ご存知、生麺の大手「シマダヤ」の東京風の細麺縮れタイプや高井戸の池田製麺の「東京雷麺」が旦那のお気に入り。 夏のラーメン、具はシンプルに。メンマ、のり、オクラ、薬味はネギではなく茗荷といきたい。 そしてミニトマト。手間はかかるが湯むき(皮に切れ目を入れて熱湯で1分、皮がするっと剥ける。)して、ハーフカット。 ボールの中で、しょうがのみじん切り、ごま油、「アジシオ」と和えて1時間置く。 熱々のラーメンに、具をトッピング、最後にトマトをタップリと入れる。醤油の香りとスープの塩気にトマトが絶妙な酸味と甘みを加えてくれる。


旦那の居場所、今回は「トマト」のおいしさについてでした。 フレッシュで食べる以外にも様々な形で食卓に上り、知らずして口にしているトマト。 固形のドライトマト、粉末の乾燥トマト、ホールやダイスカットの水煮缶詰、ピューレ、ペースト、ケチャップ、ジュースと加工方法も多岐に及ぶ。 日本で普及したのは明治から大正にかけて。あの色、あの酸味と苦み、ナス科とはいえ当時としてはかなり前衛的な食べ物だったに違いない。 トマトはペルー、エクアドルが原産、メキシコを経て、北アメリカ、ヨーロッパに伝わった。このアンデス文明の贈り物が、今では世界各国の食文化を支えている。 赤色の正体はリコピン、橙色はカロチン。ビタミンA、Cも豊富とくれば、夏にはぴったりの野菜。 蝉の声を聞きながら、流水で冷やしたトマトに、茹でたての枝豆で、ビールの栓を抜けば 蒸し暑さなどどこ吹く風?というからホント「トマト」の魅力とは不思議なものです。

(01年6月 copywright hiroharu motohashi)

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