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子供時代、一番嫌いな「おつかい」は、豆腐だった。
理由の1つは、店頭にものがないこと。「絹ごし」、「油揚げ」キチンと 名前を言えないと買えない。指差し発注のできない唯一の店だった。 理由の2つは、独特の店の雰囲気だ。店内はいつも濡れている。大豆の蒸れる臭い。
油のにおい。時々バーナーで豆腐に焼き目をつけている凄まじい光景に 出会う時だってある。 理由の3つは、包装のいい加減さ。水の中で、プラ容器に豆腐をすくいとり
紙をのせて、ビニールかなんかでくるんで渡される。 うっかりすると、家に着くまでに下半身が水浸し。 商店街が消え行く中で、思えば真っ先に、「豆腐やさん」が減っていった。
● ● ● ● 「豆腐美味いかな」
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豆腐のうまさ。 まず、温度。豆腐の熱への順応性と保温力は素晴らしい。
氷の様な冷たさ、室温の表情の豊かさ、食道で感じるアツアツ。全温度帯対応のうまさ。 次に食感、絹ごしのやさしさ、木綿の力強さ、ボロっ崩れたり、サッと溶けたり、しばらく舌の
上で味わっていると、口から鼻へ独特の香りが伝わってくる。 味はといえば、ぱっと真っ先に感じる甘さ、次にエグ味か苦味か。最後は、また奥深いコクのある甘さ。
独特のエグ味故に、大豆そのものは、そう一度にたくさん食べられない。 故に、大豆は主食になれない運命に生まれた。しかも、種子が固くそのままではおいしくない。
だから、長い年月をかけて工夫され、おいしく栄養価の高い食品として発達したのが、豆腐なのだと思う。
● ● ● ● 「豆腐百珍」
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旦那の生家の界隈では、「五右衛門」「細雪」など、豆腐料理の老舗がある。
我が国には「豆腐百珍」なるロングセラーもあり、豆腐のおいしい食べ方は無数にある。 しかし、不思議なもので、豆腐の好きな食べ方はと聞かれたら、
1に奴、2に湯豆腐、それ以降は「う〜ん?」となってしまう。 理由は、やはり、豆腐本来の、香り、食感、味が楽しめるからだろう。 蝉の声を聞きながら、縁側で食べる「冷奴」。
真夏でも何故か日本酒で、「冷奴」がたまらない。 鮮度の良い醤油と少しのひねしょうがが相性だ。 わさびや七味、柚子胡椒、しその実や、山葵のかす漬けなども良い。
もちろん、何もつけずに、何も添えずに。もうまい。 「冷奴」を凌ぐ豆腐のうまい食べ方はない。
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