旦那の居場所第3回 世界のビール礼賛

女将のダンナは「惣菜管理士」というあまり知られていない資格を持っている、 ただのサラリーマン。とにかく大の料理好き!・・で、このお店を間借りさせて あげることにしました。 名づけて「ダンナの居場所・・居酒屋のおやじを夢見て」。 これからも色々な素材を取り上げていきますのでお立ち寄りください。*この記事は1998~2005年に書かれています


20才の頃に世界の缶ビール集めに凝った。鮮度が命だから中身は胃袋へ、空缶を集める。 輸入ビールは当時(15年前)珍しかったが、大きな段ボール5つ程になった。 缶のデザインや表示を見てはそのビールの歴史や産地の風土に思いを馳せた。 学生時代に通った銀座のビヤホール ピルゼン。ここではじめてピルスナーや黒ビールを飲んだ。 最初はおいしいとは思わなかったが、こんなビールが似合う大人になりたいと思って背伸びをした。 当然、まだ出会う前だが、同い年の女将も学生時代からピルゼンにはよく通っていたらしい。

◆ビールのうまさ◆

麦芽とホップ、水。原料は同じでも、風土・水の違い、ブルワリー(醸造所)の違い、ブルーワー(醸造士)の違いで、百様のビールができる。 うまいビールはグラスに注いだ時の泡立ちから違う。そして美しい色。グラスに鼻を近づけた時のアロマ。 モルトの香り、ホップの香り、そして、発酵がもたらす果実の様な香り。そして、口に含んだ時の感覚、口当たり。 最後に、口や鼻全体に感じる、コクやふくらみ、風味、バランス。 原料、製法、こうすればきっと理想的なビールができる・・ブルーワーの仮説とそれを形にできるかどうかの技術がモノを言う。 ビールの種類に応じて、飲む時の温度も管理したい。

◆ビールにあうつまみ◆

「この料理には、こういうビールがよく合う。」というのが必ずあると思う。 タイ料理には、シンハービールがやはり美味しい。 ドイツでビールを飲み歩いたが、通い詰めたのは、イタリア人が一人で切り盛りするピザハウスだった。 僕の嗜好としてはアイスバインやソーセージより、ピザやラビオリの方がドイツビールには合っている様に思えた。 日本のラガータイプのビールにあうつまみと、エールタイプのビールにあうつまみは違うのではないか。というのが最近の関心事だ。 この答えを得るためには、まずはビールそのものを知らなくてはならない。日本地ビール協会に入会して、アドバンストエバリュエイターの資格を得た。 日本各地の地ビールレストランのメニューを研究したり、アメリカの繁盛している地ビールレストランを訪ねて、片っ端から料理を頼んだりもした。 それでも未だにその答えは見つからない。

★★★ホントにおいしい・・「ビール」にあうあの料理★★★

絹さやは本当においしい野菜。緑を思わせる独特の風味と、しゃきしゃきの食感。油との相性も良い。油も、サラダ油、バター、オリーブ油、ごま油といろいろに合わせてみると、ガラッと表情が変り、あわせたいビールの種類も変ってしまう。エールでも良いが、よく冷えたピルスナーなどのラガータイプにうってつけの「絹さやとブラウンマッシュルームの炒め物」

●●●「絹さやとブラウンマッシュルームの炒め物」 ●●●
絹さやはすじを取り、冷水に放つ。加熱直前に水切り。 大きめにカットしたブラウンマシュルームと一緒に、 好みの油でシャッキっと炒めて、塩・こしょうで味付け。 温野菜のような感覚で、モリモリ食べる。


チーズといえばワインと考えがちだが、個性の強いこの両者をマッチングさせるのは意外と難しい。その点、ビールやウイスキーなら、あまり苦労なく、チーズとのハーモニーを楽しめる。 ビールの多くは食中酒だが、食前に飲みたいもの、食後のくつろぎに時間をかけ楽しむもの、デザートと 合わせたいものなど、数限りない。「カリカリベーコンの焼きカマンベール」なら、オードブルとしても、食後酒の軽いつまみとしてもピッタリ。イギリスのスタウトや、ベルギーのトラピストタイプを舐め舐めいかが?


●●● 「カリカリベーコンの焼きカマンベール」●●● 

カマンベールは横半分に輪切り、切り口を上に向けオーブンでアツアツに。 お皿に盛り、上からカリカリベーコンを散らして出来上がり。 好みでフレンチパセリなどのハーブの風味をプラスする。 野菜ステイックやグリッシーニ、ガーリックトーストをステイック状にカットしたやつなどでチーズをすくいながら 食べてもおいしい。オードブルなど時間が経ってから食べるならチーズは加熱せず、室温で2~3時間置くとクーリーミーで トロトロの状態になるので、この食べ方がうまい。



豆苗(とうみょう)という中国野菜を見かけることが多くなった。豆苗とはえんどう豆の若芽の部分。 しゃきしゃきとした食感が楽しく、個性的な風味を持っている。カルシウムや鉄分に富み栄養価も高い。 豆苗といえば我が家では決まってこの料理。「豆苗と豚肉の炒め」 簡単でおいしく、ビールがすすむ。 イギリスのペールエールや、ヴァイツェンなどのドイツスタイルのエールビールに適。

●●● 「豆苗と豚肉の炒め」●●●
豆苗はザク切り。豚うす切りは、塩・胡椒・酒(日本酒かウイスキー)でよくもみ、片栗粉・ 油を入れてさっと混ぜる。あわせ調味料は醤油2に対し、酒1(しょうこう酒でもよい)、砂糖1、 オイスターソース1の割合であわせておく。カンカンに熱した鍋に油をなじませ、一度温度を 落し、しょうがとにんにくの微塵切りを入れ油に香りを移したら強火にして、肉を炒める。 火が通ったら、豆苗、あわせ調味料を入れて、水とき片栗粉で仕上げる。 好みで、豆板醤をいれても良い。


旦那の居場所、今回は「世界のビール」のおいしさについてでした。 手に入れにくかった世界のビールも、今では豊富に飲めるようになりました。 何より嬉しいのは、94年4月の酒税法改正を受けて、日本国内に多くの地ビールのブロワリーが誕生し 質の高い様々なビールを楽しめるようになったことです。大きな投資、たゆまぬ研究を積み重ねていらっしゃる事業家の皆さんの努力に心から敬意を払い、地ビール産業の発展をお祈りします。 がしかし、赤ワインのように、にわかブームになって、お気に入りの銘柄が手に入らなくなるのもヤダから、あまり目立たないで~な んて無責任なことも考えたりするから、酒飲みという奴は不思議なものです。

(追記)世界のビールに興味がある方は、日本地ビール協会への入会、講習会の受講をお勧めします。一日の講習で30種類程度のビールをテイスティングしながら、五感をフルに使ってビールの素晴らしさに出会えます。
問い合わせ先 日本地ビール協会 TEL(0797)-31-6911 まで
参考書としては、日本の地ビール第一号、エチゴビール社長 上原誠一郎著「ビールを楽しむ」ちくま新書 を愛読しています。
98/7月

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