旦那の居場所  

居酒屋のおやじを夢みて



居場所 4k


女将のダンナは「惣菜管理士」というあまり知られていない資格を持っている、 ただのサラリーマン。とにかく大の料理好き!・・で、このお店を間借りさせて あげることにしました。名づけて「ダンナの居場所・・居酒屋のおやじを夢見て」
これからも色々な素材を取り上げていきますのでお立ち寄りください。


盛り塩、打ち水、木の格子。敷石、玉砂利、ししおどし。引き戸をあければカウンター。 ここは、住宅街の駅前・・はずれ。「お帰りなさい」なんて野暮な言葉はかけないで。 料理の手は休めず、「いらっしゃい」やさしい目だけが笑ってる。居酒屋のおやじを夢見て、 今日も食を愛で、食を楽しむ・・ダンナの居場所。

その第10回は・・・・

  「大根」礼賛  

の正月、東京に帰った折り、久々に「三浦大根」を堪能した。 東京でもなかなか見かけなくなったが、 年の瀬ということもあってか、1本580円もする三浦が飛ぶように 売れていた。早速1cm程度の輪切りして、生のままかじりつく。 まだ、年を越してからの甘みはなかったが、みずみずしさ、歯切れの 良さ、まさしく冬の大根のうまさに感動した。

冬の大根はこうして生のままかじるのが一番うまい。子供の頃から 簡単に手に入った間食の1つだ。 ちょっとユーモラスな形の「三浦」、長く太く、特に中央部から下に向けて太くふくらむ。 この形ゆえに、収穫も一苦労で、生産は激減した。一方いわゆる「青首」はうなぎ昇り。 とにかく「三浦」は「青首」に比べると肉質のきめの細かさや、甘過ぎぬ甘みの複雑さ、 みずみすしい歯ごたえにおいて一段上だ。三浦(練馬)、長野の辛み、聖護院、桜島、 金沢。大根の品種、産地を選択するという贅沢、一度は味わってみたい贅沢だと思う。


● ● ● ● 「大根うまさの秘密」 ● ● ● ●

根ほど切り方、おろし方、加熱の仕方で表情の変わる野菜はない。 また、品種、収穫時期、一本の中でも真ん中、しっぽ、首でも劇的に風味が異なる。 生や漬物の時にはやはりあのしゃきっとした食感だ。長屋の花見ではないが、あの「パリパリ」に尽きる。 清々しい風味と食感。漬物の素材としては、最も好き嫌いを問わない全日本選手といえる。 他方、加熱をすると表情はがらっと変わる。一緒に炊いた主役のうま味をすべて抱き留める。 何故かココロ落ち着き、身体暖まる持ち味が良い。 おろしにしても、細かくおろす、鬼おろしでざくっとおろす、首のあまいところ、しっぽの辛いところ。 この素材、生半可では付き合えない。


● ● ● ● 「大根の持つ郷愁」 ● ● ● ●

「さ んま、さんま、さんま苦いか、しょつぱいか」大根といえば、佐藤春夫のこの詩を思い出す。 青きすだちの汁を大根おろしに絞りかけ、さんまのはらわたと一緒に口に放りこむ。 日本人に生まれて良かったと思う瞬間だ。 大根には、焼き魚の焦げの作用を中和するオキシターゼが含まれる。 うまいばかりか、理に適った食べ方だ。冬はとかく、ビタミンが欠乏しがちだが、 ビタミンCが抜群に多い。正月で弱った胃腸に「すずしろ」(大根)の入ったお粥は ありがたい。消化を助けるジアスターゼの効果だ。 本当に冬にはなくてはならない貴重な野菜、今冬もありがとう、大根!


  ホントにおいしい・・「大根」にあうあの料理  



壷井栄の小説に「大根の葉」という短編があった様に記憶する。 小学生の時に読んだから、30年近く前の記憶。間違っていたら ゴメンナサイ。父親を亡くした母1人子2人の家族が、貧乏故に 大根の葉っぱを食べながら、それでも明るく助け合い生きていく話。 そうです。大根の葉っぱはうまいのです。鉄や、ビタミンB1、カルシウムは 根より葉にあるわけで、「大根の葉の醤油炒め」 でご飯が何杯でも食べられます。  

12k 「大根の葉の醤油炒め」 大根の葉(正確には葉と茎)は大きく微塵切り。 ゴマ油でよく炒め、さっと酒をふり、少量の砂糖かみりん、醤油、「ほんだし」 で味付け。冷蔵庫で保存し、味が馴染むほどにうまい。 油揚げやセロリの葉などと一緒に炒めても抜群。 だから葉っぱは絶対捨ててはいけない。


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煮るか、漬けるか、おろすか。大根の食べ方はこの3通りに代表される。 でも、炒めても、またうまい。 せんぎりにして、半生かな?という感じにしゃきっと炒める。 「大根のせんぎり炒め」


8k 「大根のせんぎり炒め」
大根はせんぎり。さっと砂糖、塩をふり、余分な水分を抜く。 醤油、酒、唐辛子で和え、ゴマ油などでさっと炒める。 簡単だけど清々しいつまみができる。 我が家では、唐辛子のかわりに、めちゃめちゃ辛い「唐辛子を 泡盛で漬けた汁」*を使う。

*泡盛に好きなだけ赤唐辛子を入れ1ヶ月位から使える。 炒め物などにさっとかけるとそれは堪らなくうまい。


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大根のかつらむきが始めて出来た時は嬉しかった。 でもその皮、もったいない。 皮の食感は面白い。噛むと皮の方と中の方の噛んだ様子が微妙に違う。 味のしみ込み方や、色のつき方まで違う。 つるん、しにゃ、と美味しい、「大根の皮の炒め煮」


8k 「大根の皮の炒め煮」
「大根の皮の炒め煮」 大根の皮はかつらむきの状態から、長細く5mmから1cm程度に切る。 油でしんなりするまで、よく炒め、ひたひたの水、酒、少量の砂糖かみりんで煮て 醤油、ほんだしで味付け。最後は強火で汁気を飛ばすように炒め煮る。 にんじんの皮など他に捨てるような野菜をいれても良い。こ、これは何者?という 程にうまい。だから皮は絶対捨ててはいけない。



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旦那の居場所、今回は「大根(だいこん)」のおいしさについてでした。 やはり大根といえば、各地の漬物。一夜漬け、ぬか漬け、たくあん、守口漬け、 いぶりがっこ、さくら漬け、なた漬け、なます、べったら漬け等など。 こちとら江戸っ子だから、時々無性にべったらが食べたくなります。 写真は「手作りの変わり漬け3種」、にんにく醤油漬け、ハチミツ老酒漬け、自家製べったら(酒粕で)

古くから大根は、無病息災につながる食べ物、病気の予防になるという 認識があった様で、流石に昔の人は偉い!と思います。 そうそう、申し遅れましたが、やはり大根といえば、風呂吹き。 たいそうシンプルな味付けでも、あつあつをつつきながら熱燗で一杯やれば、 危うく腰を抜かしてしまう位、「うまい!」というからほんと大根の魅力とは不思議なものです。

(99年2月 copywright Hiroharu Motohashi)
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