旦那の居場所第1回 「じゃがいも」礼賛

店主・女将のダンナは「惣菜管理士」というあまり知られていない資格を持っている、 ただのサラリーマン。とにかく大の料理好き!・・で、このお店を間借りさせて あげることにしました。 名づけて「ダンナの居場所・・居酒屋のおやじを夢見て」。 これからも色々な素材を取り上げていきますのでお立ち寄りください。*この記事は1998~2005年に書かれています


★★「じゃがいも」礼賛★★

2年前の秋に北海道十勝平野の士幌町(シホロ)を訪ね、じゃがいもの収穫を体験させて 頂いたことがある。見渡す限りのじゃがいも畑に巨大なハーベスターを一直線に乗り入れていく。 650kgものじゃがいもが入る頑丈なスチール製のコンテナはすぐに一杯になった。

◆ 士幌のいも作り ◆

士幌のいも作りは、まず土作りからはじまる。士幌牛の完全堆肥が肥沃な畑を作り上げる。 とうもろこしなどとの輪作により、4~5年に1度しか同じ畑でいもは作らない。 そして、いもの選別は厳格を極める。農協の検査場には、コンテナを満載したトラックが次々にやって来ては、 厳しい品質検査を受けて等級付けされる。このランクによって価格が決まり用途が決まる。不満足なものは 「澱粉落ち」=でん粉工場行きとなる。巨大な貯蔵施設では、1年中温度・湿度が管理され出荷を待つ。 260戸を超える農家の生産性は極めて高い。町の英知を結集していも作りに取り組んでいる。

◆ じゃがいも おいしさの秘密 ◆

しかし、本当に士幌のいもを最高の品質に育て上げるものは、北海道の大地である。シホロとはアイ ヌ語で「広大な土地」を意味する。昼夜の寒暖差の激しいこの気候がじっくりと、いものでんぷん価を 高めていく。そして、この厳しい自然に働きかける農家の皆さんの情熱がそれを支える。男爵、メークイーン、 ワセシロ、トヨシロ、キタアカリ、農林一号、ホッカイコガネ。 とれたてのじゃがいもを試したが、なぜかどれも飛び切りうまい。うまさの秘密はでんぷん価=ほくほく感にあった。 じゃがいもは本来、年に一度収穫されるものだが、士幌をはじめ産地の努力で、一年中ベストな状態で 私たちの食卓にのぼる。


★★★ホントにおいしい・・「じゃがいも」のあの料理★★★


銀座のとある料理屋の名物料理に、じゃがいもの千切りをバターで炒め、あっさりと塩、胡椒で味付け アツアツを食べるというのがあった。バターの風味とシャキシャキの食感がバッチリの「絶品のジャガバター」だった。

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●●●「絶品のジャガバター」●●●
じゃがいもは皮をむき千切り、フライパンを熱したらサラダ油で千切りおじゃがをしゃきしゃき程度に炒める。 手早くバターで風味を付けて塩、胡椒。あれ・ちょっとまだ早かったかな位が丁度よい。 バターはけちらず・・、バターの塩味に気を付けて・・、胡椒は黒の荒挽き・・がポイント。


スペインはバルセロナの漁港のレストランで食べた、つけ合わせのマセドアンサラダは抜群だった。じゃがいもにもアルデンテがあるならまさにそれ。マヨネーズは使わずに、オリーブオイルの風味が効いた あっさりとしてスカット冷たい・・ああ「バルセロナのマセドアンサラダ」


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●●●「バルセロナのマセドアンサラダ」●●●
じゃがいも、にんじん、ズッキーニ、ハムは賽の目切り(マセドアン)、 にんじん、じゃがいもは、オリーブオイルと塩、胡椒で下茹で。 フライパンにオリーブ油を入れて、ズッキーニ、ハムを炒め、茹でたじゃがいも、にんじんを加える。 塩、胡椒で味付け、白ワインビネガーで酸味をふる。キンキンに冷やして。食べる前にレモンを ふりかけると味がしまる。にんじんは、油と一緒に食べるとカロチン(ビタミンA効力)の吸収が良い。


母親はどうも何かの料理番組で仕入れたらしい。しかし、今となっては、おふくろの味という記憶しかない。生のじゃがいもをすりおろしてお好み焼のようにフライパンで焼いただけの料理。外側はパリっと、中はねちょねちょ。当家では名付けて「じゃが好み焼き」

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●●●「じゃが好み焼き」●●●

じゃがいもは生のまますりおろし、ねぎの微塵切りをドバッと入れてかき混ぜ、 あとはお好み焼きの要領で、フライパンに油をしいて両面を焼くだけ。 挽肉やコンビーフなどトッピングをいろいろ試したが、「ねぎだけ」が何故か一番うまい。


ダンナの居場所、今回は「じゃがいも」のおいしさについてでした。南アメリカ生まれのじゃがいもは、15世紀末にはヨーロッパに渡り、日本へは1600年前後にオランダ人によってジャカトラ(現インドネシア)から持たらされ、ジャガタライモ=ジャガイモ と呼ばれるようになりました。主成分はでん粉で、くせもなく保存もきき、多くの地域で主食として・保存食として古来より大活躍してきました。ビタミンC、カリウムを多く含み、一説には高血圧予防効果があるともいわれています。そうです。フランス語で「じゃがいも」はポム・ド・テール=「大地のリンゴ」というのもうなずけます。じゃがいも料理と聞いてまず思い出すのは、「肉じゃが」ですが、東日本では粉質の男爵芋に豚肉、 西日本では粘質のメークイーンに牛肉という組み合わが一般的というから、不思議なものです。(98年4月)


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