旦那の居場所第17回 南瓜礼賛

女将のダンナは「惣菜管理士」というあまり知られていない資格を持っている、 ただのサラリーマン。とにかく大の料理好き!・・で、このお店を間借りさせて あげることにしました。 名づけて「ダンナの居場所・・居酒屋のおやじを夢見て」。 これからも色々な素材を取り上げていきますのでお立ち寄りください。*この記事は1998~2005年に書かれています


最近、我が家の食卓に、「南瓜」の登場する事が増えた。 緑黄色野菜をたっぷり娘に食べさせようという女将の知恵らしい。 娘も「カボチャ」を良く食べる。色がきれいで、噛みやすく、なんといってもあのほのかな甘さが受けている様だ。 「芋、エビ、ナンキン」とは良く言ったもの。こちらはなんとなく、肩身が狭い。

本来は夏から秋に旬を迎える「南瓜」。季節はずれの礼賛だが、冬至に食べる習慣は、 野菜の少ない時期の栄養補給の意味があるとか。もともと、貯蔵性の高いかぼちゃだが 収穫後、温度・湿度を一定に管理して、表面を乾燥させ、保存性を高める工夫がされている。 このキュアリングなる工程により、果肉のでんぷんが糖化して甘味が強く、色鮮やかに柔らかく変身、一年中おいしく食べられる。

● ● ● ● 「かぼちゃうまさの秘密」 ● ● ● ●

かぼちゃのうまさは、第一にあの甘さ。ほのかで上品。 その中に野菜特有の風味が隠れている。 次に香り。皮をざくっと包丁で落としていく時、中のさなごや種を手で取り出す時、 なんとも言えぬ特有の香気を感じる。 生命力の詰まった力強い香り。それでいて発展途上の青々しい香り。 果肉より皮や皮のすぐ下にこの香りが多いような気がする。 次に、テクスチャーというか、食感というか。表情の豊かな肌。 種類や、加熱時間、温度、加熱時の混ぜ方などによって、全く異なる表情を見せる。 煮崩れたもの、歯応えを残したもの、殆ど生に近いシャキシャキのもの。

南瓜は大きく3つの種類に分けられる。1つは日本かぼちゃ、黒皮、鹿ケ谷など、溝が深く、 水分が多く淡白でねっとりした種。それから、西洋かぼちゃ、 栗かぼちゃに代表される現代のマジョリテイ。粉質でホクホク感がある。 もう一つはペポかぼちゃ。そうめんかぼちゃやズッキーニなど、シャキシャキ感が身上の 甘味が少ないタイプ。好みはあるが、いずれも食感が決め手。 人それぞれの好みを満たし、ああうまいかな南瓜。


● ● ● ● 「かぼちゃ料理の秘訣」 ● ● ● ●


本来の甘さと風味を楽しむためには砂糖少々だけで煮るといい。 だしも醤油も不要。かぼちゃのうまさと香りがよくわかる。 八方だしをよく染ませた型崩れのない凛とした煮物も清清しい。 肉のうま味とは出会いもの。鶏肉やベーコン、ひき肉などと炊いてもおいしい。 この場合は醤油でも良いが、生クリームで煮ると、上品に甘味が引き立つ。 スープやグラタンに使われるのも納得。 てんぷら、えびのすり身で挟み揚げなど、油との相性も良い。 唾液が吸い取られることに、我慢がならない旦那としては、ほぼ生に近い千切りを バリバリ食べるのをもって、かぼちゃの最高の食し方としている。

■■■ 家庭でもほんとにおいしい、南瓜アレコレ ■■■

似た食感を持つ「じゃがいも」「さつまいも」との大きな違いは灰汁の無さ。 だから、生でも食べられるし、糠漬けでも結構いける。 あっさりとしたドレッシングで、しゃきしゃき、バリバリ、かぼちゃを食べよう。「かぼちゃのバリバリサラダ」

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かぼちゃは生のまま千切り。端に皮が残るように工夫して切ると美しい。 にんじんも同様。それぞれ食感を残してさっとお湯にくぐらせる。 好みで他の野菜とも組合せ自由。ノンオイルしょうゆベースのあっさりドレッシングで。 オイル&ビネガーのシンプルなドレッシングもおいしい。マヨネーズは野暮になる。 硬すぎて切れない場合、少し電子レンジにかけると切り易い。しかし、無理をするのは大怪我の元。こんな時はあきらめて 別の料理に転換すること。


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初めてのデザートの登場。このプリン、家庭で作ってもかなりうまい。 目分量でも失敗がない。買ってくるのよりうまいかも知れない。慣れれば仕込み10分の簡単「かぼちゃのプリン」

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鍋で砂糖を煮詰めてカラメルを作り、オーブン容器に流し入れる。
かぼちゃは電子レンジでチン。ステンレスのざるとおしゃもじで裏ごし。 ボールにうらごし、卵、少し温めて砂糖を溶かした牛乳を入れ混ぜる。
オーブン容器(中のカラメルは既に固まっている)に流し入れバニラエッセンスを振る。 オーブンでじっくり焼く。(175度25分目安)生地に入れる砂糖を少し多目に入れるとふっくらできる。
分量の目安は、カラメル(水100ccに砂糖大さじ5で煮詰める) 生地(かぼちゃ100g、牛乳350cc、卵2個)


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ニョッキなる奴がでかい顔しだしたのは最近だ。随分きどった野郎で、ふにゃふにゃとだらしがない。 とらえどころが無いくせに、滅法うまい。しかし、騙されちゃあ、いけねえ! よく考えてみりゃ、コイツは「すいとん」だ。 てなわけで、すっとこどっこい「かぼちゃのニョッキ」

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かぼちゃは電子レンジでチンしてステンのざるとおしゃもじで裏ごし。 これに、薄力粉、塩、こしょう、好みで卵と混ぜあわせ、ひとまとめ。 適当に棒状に伸ばしてタンタン包丁で切ってお湯に投げ込む。 柔らかいのが好きなら、ゆるゆるにこねて、まさに「すいとん」の要領で、スプーンでお湯に落としても良し。 塩を効かせたお湯に浮いてきたら出来上がり。 ソースは、きざんだアスパラ、ねぎなどを甘味がでるまでオリーブ油で弱火でいため、 塩、バジルで味付けしたやつや、生クリームを煮詰めて塩、胡椒、バターで和えやつ等がよく合う。


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旦那の居場所、今回は「南瓜(かぼちゃ)」のおいしさについてでした。 日本かぼちゃといっても、産まれは中央アメリカ。 16世紀中頃にポルトガル船で、カンボジアから持ち込まれた。故にかぼちゃ。 ご存知、かぼちゃは緑黄色野菜の中でも優等生。カロチン、ビタミンB1、B2、C カリウム、食物繊維が多く含まれている、微量栄養素の宝庫。 しかも、果肉だけでなく、さなごや、種まで食べられるというからパーフェクト。 いやいや、魔法ひとつできらきらの馬車にまで変わってしまうというから ほんと南瓜の魅力とは不思議なものです。

(99年12月 copywright hiroharu motohashi)
99/12月

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