|
かれこれ、6年程前になろうか、レンタカーを借りて、やきものの里、小石原を訪ねた。
秋月から抜ける悪路で峠を越えると、そこは、鄙びた里であった。 一人旅の気侭さで、ほとんどすべての窯を歩き、ここぞという窯で大ぶりの片口鉢と
味わいのある汁次を求める。○印に大という銘。今も懐かしいマル大窯との出会いだった。
歯切れの良い、声の大きい奥さんに、福岡空港までの近道を尋ねると、 「今からうちの人が、市内に個展の片付けにいくからついて行く?」と、
溌剌と笑った。「お言葉に甘えて」出発までぶらぶらと時を過ごした。 無口だが人の良さそうな旦那さん、明るく気さくな奥さん。 広い敷地に、大きな仕事場、旧家を移してきたという重厚な茅葺きの母屋。
私道に沿って小川が流れ、聞こえるのは遠くに犬の鳴く声、唐臼の音。 初めて訪れたのに、立ち去り難い郷愁の念にかられた居心地の窯、癒しの里。

● ● ● ●うまいものに囲まれて器を焼く
● ● ● ●
それから、縁あって、幾度も伺うようになったマル大窯。その度に、「お茶請けに」とか
「この器にはこんな料理が」などと、奥さんの料理を口にする機会に恵まれる。 「裏の畑でとれたもの」が「ここの窯で焼いた器」に盛られて、信じられない程うまい。
時間があれば、奥さんは裏の畑に手を入れ、義母から料理の技を乞う。 やっとコンニャクが思い通りに作れたとか、今年は鹿が蕎麦の実を全部食べてしまったとか、
楽しい話題は尽きることがない。 地の素材、地の土。そこから、こんなにも豊かで、崇高な恵みを得ることができる。 ああ、豊かかな、小石原の土。

● ● ● ●我が家のふるさと宅配便
● ● ● ●
マル大窯の奥さんは、女将の仕入れに必ずと言っていいほど、心暖まるメッセージと
新鮮な野菜を入れてくれる。 その多くは、「ふーん、はて、スーパーで売っていない野菜、どう調理したものか?」である。 水いもの茎、むかご、芋茎(ずいき)、隼人瓜にそうめん瓜…・。
女将と大騒ぎ、白旗を上げてTELする時もあるが。こういう頭の使い方も楽しい。 小石原で食べた記憶を頼りに、見よう見まねで作っても、何故かうまい。
東京出身の奥さん、「この人とは何故か話があった。とても楽しくて誠実な人」だから、太田成喜さんを選び、 「大家族に囲まれて、最愛の人達といつも一緒に、生活そのものを楽しみたかった」
から、小石原の里に嫁いだ。 今日も、小石原からの箱を開けると豊かな自然、細やかな情けの匂いがする、我が家のふるさと宅配便。 ああ、美しいかな、小石原の里。
|