居場所 4k

女将のダンナは「惣菜管理士」というあまり知られていない資格を持っている、 ただのサラリーマン。とにかく大の料理好き!・・で、このお店を間借りさせて あげることにしました。名づけて「ダンナの居場所・・居酒屋のおやじを夢見て」
これからも色々な素材を取り上げていきますのでお立ち寄りください。


盛り塩、打ち水、木の格子。敷石、玉砂利、ししおどし。引き戸をあければカウンター。 ここは、住宅街の駅前・・はずれ。「お帰りなさい」なんて野暮な言葉はかけないで。 料理の手は休めず、「いらっしゃい」やさしい目だけが笑ってる。居酒屋のおやじを夢見て、 今日も食を愛で、食を楽しむ・・ダンナの居場所。
その第26回は・・・・

やきものの里小石原「マル大窯」礼賛

れこれ、6年程前になろうか、レンタカーを借りて、やきものの里、小石原を訪ねた。 秋月から抜ける悪路で峠を越えると、そこは、鄙びた里であった。 一人旅の気侭さで、ほとんどすべての窯を歩き、ここぞという窯で大ぶりの片口鉢と 味わいのある汁次を求める。○印に大という銘。今も懐かしいマル大窯との出会いだった。

歯切れの良い、声の大きい奥さんに、福岡空港までの近道を尋ねると、 「今からうちの人が、市内に個展の片付けにいくからついて行く?」と、 溌剌と笑った。「お言葉に甘えて」出発までぶらぶらと時を過ごした。 無口だが人の良さそうな旦那さん、明るく気さくな奥さん。 広い敷地に、大きな仕事場、旧家を移してきたという重厚な茅葺きの母屋。 私道に沿って小川が流れ、聞こえるのは遠くに犬の鳴く声、唐臼の音。 初めて訪れたのに、立ち去り難い郷愁の念にかられた居心地の窯、癒しの里。

奥様 母屋

● ● ● ●うまいものに囲まれて器を焼く ● ● ● ●

れから、縁あって、幾度も伺うようになったマル大窯。その度に、「お茶請けに」とか 「この器にはこんな料理が」などと、奥さんの料理を口にする機会に恵まれる。 「裏の畑でとれたもの」が「ここの窯で焼いた器」に盛られて、信じられない程うまい。 時間があれば、奥さんは裏の畑に手を入れ、義母から料理の技を乞う。 やっとコンニャクが思い通りに作れたとか、今年は鹿が蕎麦の実を全部食べてしまったとか、 楽しい話題は尽きることがない。 地の素材、地の土。そこから、こんなにも豊かで、崇高な恵みを得ることができる。 ああ、豊かかな、小石原の土。

ご馳走になった膳 お手製コンニャク

● ● ● ●我が家のふるさと宅配便 ● ● ● ●

ル大窯の奥さんは、女将の仕入れに必ずと言っていいほど、心暖まるメッセージと 新鮮な野菜を入れてくれる。 その多くは、「ふーん、はて、スーパーで売っていない野菜、どう調理したものか?」である。 水いもの茎、むかご、芋茎(ずいき)、隼人瓜にそうめん瓜…・。 女将と大騒ぎ、白旗を上げてTELする時もあるが。こういう頭の使い方も楽しい。 小石原で食べた記憶を頼りに、見よう見まねで作っても、何故かうまい。
東京出身の奥さん、「この人とは何故か話があった。とても楽しくて誠実な人」だから、太田成喜さんを選び、 「大家族に囲まれて、最愛の人達といつも一緒に、生活そのものを楽しみたかった」 から、小石原の里に嫁いだ。 今日も、小石原からの箱を開けると豊かな自然、細やかな情けの匂いがする、我が家のふるさと宅配便。 ああ、美しいかな、小石原の里。

南瓜・そうめん瓜・水芋



・・小石原の野菜で作る、料理アレコレ・・

玉ねぎの食感が最高の隠し味。鮮やかな赤に染まった芋茎。 煎り胡麻を擦って、ぱらっとかける。 贅沢な、贅沢な「芋茎の甘酢漬け」。大田さんに教わった逸品。

芋茎の甘酢漬け

「芋茎の甘酢漬け」

鍋にごく少量の油を敷き、玉ねぎのスライスをシャキッと炒める。 芋茎は皮を剥き水煮にしておく。 さっと火にかけた酒1、みりん1に、淡口醤油1、酢1を混ぜタレとする。 芋茎、玉ねぎを混ぜ、タレに漬けておくと、翌日には見事なピンクに変わる。 (

 


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そうめん瓜の食べ方は、いろいろ。 でも、炒めても、またうまい。 せんぎりにして、半生かな?という感じにしゃきっと炒める。 「そうめん瓜のカリカリ炒め」

そうめん瓜のカリカリ炒め

「そうめん瓜のカリカリ炒め」

輪切りにしたそうめん瓜を湯がき、水に取りほぐす。 (まるでそうめんの様に繊維状になる) 水気を切り、ごま油でさっと炒め、好みの味で。 シンプルな塩味もうまい。 この他、そうめん瓜は、千切りの胡瓜、ハムなどと一緒に和風ドレッシング で和えてもうまいし、マヨネーズでスパゲティーサラダ風でも楽しめる。 ほぐさず、サイコロ状にして砂糖や蜂蜜のシロップ漬けにしても、楽しいデザートになる。


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水いもの茎はしゃきしゃきとした食感が身上。 パリンとしたスライスに酢味噌をさっとかけて。 水いもの茎が酢味噌に合うのは、有田は龍門ダムの川魚料理の名店 「龍水亭」で学んだ食べ方。 酒に良し、肴に良し、 こってりとした料理のつまにも良しの、「水いもの酢味噌シャキシャキ」。
水いもの酢味噌あえ

「水いもの酢味噌シャキシャキ」

水芋の茎は、水に張り、皮を指で縦に剥く。 断面が映える様にスライス。 酢味噌をかけて、シャキシャキのうちに食べる。

旦那の居場所、今回は、やきものの里小石原「マル大窯のうまいもの」についてでした。 手塩にかけて育てた野菜に、必ず「いりこ」や「かしわ」等、動物性のうま味を かくし味に使う技が絶妙の味を醸し出す。 小石原の里の郷土料理「おばいけの炊き合わせ」は、 新じゃが、筍、にんじん、里芋などを「おばいけ」と一緒に炊き合わせた絶品。 保存の利く海の幸と、裏山で採れた山の幸との融合。 今の時代にあって、「質素」「素朴」であるが故の「豊かさ」を感じるこの里の料理。 女将の仕入れで訪ねる商談のはずが、いつしか座敷に上がり込み、 一杯ひっかけながら長居をしてしまう。まるで、故郷の我が家でくつろぐ様な 錯覚に囚われつつ、ついつい食も酒も過ごしてしまうというから、 ほんと、やきものの里「マル大窯のうまいもの」の魅力とは不思議なものです。
(2000年11月 copywright hiroharu motohashi)

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