旦那の居場所  

居酒屋のおやじを夢みて



居場所 4k


女将のダンナは「惣菜管理士」というあまり知られていない資格を持っている、 ただのサラリーマン。とにかく大の料理好き!・・で、このお店を間借りさせて あげることにしました。名づけて「ダンナの居場所・・居酒屋のおやじを夢見て」
これからも色々な素材を取り上げていきますのでお立ち寄りください。


盛り塩、打ち水、木の格子。敷石、玉砂利、ししおどし。引き戸をあければカウンター。 ここは、住宅街の駅前・・はずれ。「お帰りなさい」なんて野暮な言葉はかけないで。 料理の手は休めず、「いらっしゃい」やさしい目だけが笑ってる。居酒屋のおやじを夢見て、 今日も食を愛で、食を楽しむ・・ダンナの居場所。

その第16回は・・・・

  秋刀魚礼賛  

心ついた頃から、魚はことごとく食べられなかった。 「焼き魚」というカテゴリーを克服できたのは、ひとえに「秋刀魚」のお陰。 「騙されたと思って食べてみな。」母親の勧めに、目をつぶって口に放り込む。 「うまい!」。魚嫌いがその一事で「目から鱗」。でもこの魚はウロコもなくて食べやすい。 しかも、骨離れの良さに、魚の食べ方を知らない魚嫌いも大助かり。 今では、食べられない魚は、いなくなった。

築地の場外で、刺し身用の、それは型の良い秋刀魚を手に入れたのは、10数年前。 家で秋刀魚の刺し身を作るのは初めてと、朝から食べる。 思えば、その頃までは、秋刀魚は加熱して食べるもの。生で食べられるのは、 産地の特権と相場が決まっていた。 寿司屋にでも行かなければ、食べられなかった秋刀魚の刺し身。 今では、なんと手に入りやすくなったことか。

● ● ● ● 「秋刀魚うまさの秘密」 ● ● ● ●

刀魚といふ魚、味は抜群。 淡白すぎず、臭すぎず、柔らかすぎず、脂っぽ過ぎず、どこかのバランスが 少しでも狂えば、下品で野暮な味になってしまうだろうが、ギリギリの線で最高のうまさを誇る。 しかも、血合いの奥深さ、腹綿の苦さ、皮の香ばしさ、どこをとっても申し分ない。 体調約30cm。刀のような、冷たく輝く、ラメの入った魚体。 胴の膨らみを両断すれば、透き通った魚肉と皮の間に、脂肪の層が見える。 春から夏にかけてえさを求めて北上、 8月にはオホーツク海からサハリンに達し、 水温が低下するにつれ南下、(水温15〜18度好む) 9〜10月に三陸沖に出現。 遠く江戸時代には、房総沖までたどり着いた秋刀魚は、 脂の乗りも最高で、これが水揚げされれば、河岸は大騒ぎ。 秋刀魚は、魚偏に祭とも書き、房総のさんまがあまりに美味いので、「 さんま騒がせ」 なる言葉まで残した。

● ● ● ● 「サンマ、サンマ、サンマ開きか、灰干しか」 ● ● ● ●

刀魚を炭火で焼くと何故美味いか?遠石効果もさることながら、 自らの身体から落ちる脂で、ジュージュー香ばしく燻され、腹からも、脂と共に、余分な臭味が飛んで、 絵も言われぬうまさに変わる。 アウトドア・ブームの昨今だが、我が家では屋外バーベキューは肉でなく魚、秋は専ら秋刀魚。 こんな贅沢は、マンションの中では味わえない。 開きもうまい。特に骨の残った半身の表面のせんべいみたいになった奴を骨からビローンと 剥がして食うのがうまい。ぬか漬けも良し。灰干しも良し。さんまの美味さが凝縮されて 格調高い味になる。そこはかとなく、うまい、秋の王様、秋刀魚。



・・家庭でもほんとにおいしい、秋刀魚アレコレ・・


「秋刀魚の蒲焼き」 学生時代、酒のつまみにお世話になった100円の「さんまの蒲焼き」缶詰め。 こってり味だから、日本酒、焼酎、なんでも相性が良かった。 しかし、自分で蒲焼きを作って、吃驚仰天。手作りの蒲焼きもまた、 缶詰めとは異なる絶品のつまみ。

秋刀魚の蒲焼き

「秋刀魚の蒲焼き」

秋刀魚は三枚に卸し、片栗粉をまぶす。 フライパンに少な目に油を敷き、身から先に、両面を焼き上げる。 余分な脂を除いてから、蒲焼きのタレをかけ、強火でからませる。 粉山椒をふりかけて。あとは、酒でもご飯でもなんでもござれ。 タレ=酒2、みりん3を軽く煮切り、濃口醤油3、砂糖1。



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「サンマの燻製」 旬の魚の熱燻は、その魚が持つ本来の個性を楽しめる。 余分な脂とともに、雑音が取れ、本来のうま味だけが強調される。 「サンマの薫製」、どのタイプのアルコールにも合う、抜群の秋のつまみ。

海水程度の塩水に、ハーブを入れて、サンマを1時間漬ける。 中華鍋にスモークチップを入れて、網をのせ、サンマを入れて じっくり燻製にする。温薫よりやや熱い程度で、(ガスなら弱めの中火) 30分程度スモークする。途中でひっくり返さない方が美しく仕上がる。 中華鍋でも代用はできるが、この際、簡易スモーク用のホーロ製鍋を 揃えても悪くない。料理の幅がグンと広がる。

中華鍋でスモ−ク

薫製


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「秋刀魚の豆鼓蒸し」 柔らかく、熱い秋刀魚を、鱈腹喰いたい。そこで、蒸し料理。 面倒なら骨ごと筒切りでも、大胆で素適。
豆鼓蒸し

「秋刀魚の豆鼓蒸し」

サンマは三枚に卸して、10分タレにつける。 タレは、しゅうゆ3、みりん3、酒1。 豆鼓、しょうが、好みでにんにくを刻み、鍋に油を温め、 豆板醤、にんにく、しょうが、豆鼓を軽く炒める。 タレつきサンマを皿に入れ、炒めた香りの素をからめ、蒸す。 このタレつきサンマ、軽く陰干しにして、焼いてもうまい。


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旦那の居場所、今回は「秋刀魚(サンマ)」のおいしさについてでした。 「サンマは目黒に限る。」という昔から庶民の重要な蛋白源。 ビタミンA・E、ナイアシン、カルシウム、微量栄養素も豊富で、DHAもいっぱい。 夏の疲れが出る頃に、海に囲まれた魚好きの民族に、神様が遣わされた海の恵み。 昔の人は「秋刀魚が出ると按摩引っ込む。」と言ったとか。 四日市在住の折り、紀伊半島を一周して、熊野周辺の名物の 秋刀魚の姿寿司、めはり寿司などを食べに行った。 庶民の魚サンマには、それぞれの土地土地の呼び名や郷土の料理法が あるに違いない。 それにしても、秋刀魚といえば塩焼き、塩焼きといえばさんま。 これはひょとすると、、日本を代表する最強の魚料理かもしれないなどと、 妙に一人で納得しつつ、食欲の秋、アツアツをご飯にのせれば、 2〜3杯はすぐにお替わりというから、ホント秋刀魚の魅力とは不思議なものです。

(99年10月 copywright hiroharu motohashi)
99/10月

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