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物心ついた頃から、魚はことごとく食べられなかった。 「焼き魚」というカテゴリーを克服できたのは、ひとえに「秋刀魚」のお陰。
「騙されたと思って食べてみな。」母親の勧めに、目をつぶって口に放り込む。 「うまい!」。魚嫌いがその一事で「目から鱗」。でもこの魚はウロコもなくて食べやすい。
しかも、骨離れの良さに、魚の食べ方を知らない魚嫌いも大助かり。 今では、食べられない魚は、いなくなった。
築地の場外で、刺し身用の、それは型の良い秋刀魚を手に入れたのは、10数年前。 家で秋刀魚の刺し身を作るのは初めてと、朝から食べる。 思えば、その頃までは、秋刀魚は加熱して食べるもの。生で食べられるのは、
産地の特権と相場が決まっていた。 寿司屋にでも行かなければ、食べられなかった秋刀魚の刺し身。 今では、なんと手に入りやすくなったことか。
● ● ● ● 「秋刀魚うまさの秘密」
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秋刀魚といふ魚、味は抜群。
淡白すぎず、臭すぎず、柔らかすぎず、脂っぽ過ぎず、どこかのバランスが 少しでも狂えば、下品で野暮な味になってしまうだろうが、ギリギリの線で最高のうまさを誇る。
しかも、血合いの奥深さ、腹綿の苦さ、皮の香ばしさ、どこをとっても申し分ない。 体調約30cm。刀のような、冷たく輝く、ラメの入った魚体。
胴の膨らみを両断すれば、透き通った魚肉と皮の間に、脂肪の層が見える。 春から夏にかけてえさを求めて北上、 8月にはオホーツク海からサハリンに達し、
水温が低下するにつれ南下、(水温15〜18度好む) 9〜10月に三陸沖に出現。 遠く江戸時代には、房総沖までたどり着いた秋刀魚は、 脂の乗りも最高で、これが水揚げされれば、河岸は大騒ぎ。
秋刀魚は、魚偏に祭とも書き、房総のさんまがあまりに美味いので、「 さんま騒がせ」 なる言葉まで残した。
● ● ● ● 「サンマ、サンマ、サンマ開きか、灰干しか」
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秋刀魚を炭火で焼くと何故美味いか?遠石効果もさることながら、
自らの身体から落ちる脂で、ジュージュー香ばしく燻され、腹からも、脂と共に、余分な臭味が飛んで、 絵も言われぬうまさに変わる。 アウトドア・ブームの昨今だが、我が家では屋外バーベキューは肉でなく魚、秋は専ら秋刀魚。
こんな贅沢は、マンションの中では味わえない。 開きもうまい。特に骨の残った半身の表面のせんべいみたいになった奴を骨からビローンと 剥がして食うのがうまい。ぬか漬けも良し。灰干しも良し。さんまの美味さが凝縮されて
格調高い味になる。そこはかとなく、うまい、秋の王様、秋刀魚。
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