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シングルモルトウイスキーの世界に魅了されたのは、今から12年程前。先輩と通った六本木の店のバーテンダーに、その奥の深さを教えてもらった。シングルモルトとは、ただ一つの蒸留所で作られるモルトウイスキーだけを瓶詰めにしたもので、他のモルト原酒やグレインウイスキーをブレンドしない酒である。その美味しさに魅せられて、どれ程のシングルモルトを飲んできただろうか。
岡山在住時代、地元の老舗バー「リットン」の当時のチーフバーテンダーの薦めで、ザ・スコッチ・モルト・ウイスキー協会に加盟した。スコットランドのエジンバラに本部を置くこのソサイエティーは、プロ、アマに限らずモルトウイスキーを愛する人々の団体で、協会の厳選したシングルカスクの逸品が手に入る。旦那の居場所、今回はシングルモルトを礼賛したい。
● ● ● ●シングルモルトウイスキーのうまさの秘密●
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シングルモルト、日本で言えばそれは差し詰め地酒に相当する。スコットランドには多くの蒸留所があるが、それぞれの個性は飲み比べに値する強烈な個性を持っている。生産地区の気候や緯度、立地による違い、蒸留所による違い、水や原料による違い、仕込み樽による違い、熟成期間による違いと、モルトウイスキーの色、香、味、フィニッシュを形作る要素も様々だ。既に操業を終えた蒸留所も多いが、20年30年前に仕込んだものを世に送り出しているところもある。
大麦麦芽(モルト)を発芽により糖化し、発酵させる。これを銅製の単式蒸留釜「ポットスチル」で2回もしくは3回蒸留する。こうしてできた無色透明の荒々しい新酒「ニューポット」をオーク材でできた樽で熟成する。この時の樽はバーボンウイスキーやシェリーの熟成に使われた樽などが使われるが、この樽によっても出来上がりの個性が大きく決する。
保税倉庫の樽の中で、スピリッツは長い歳月をかけて、芳醇でまろやかな、気高い琥珀色の飲み物に変化する。スコットランドの気候と大地が育み、腕自慢の職人達が丹精し、天使に分け前を盗み飲みされながらも20年30年と眠り続けたモルトの傑作。封を切ったばかりのボトルから注がれる重く低いが弾みのある「トクトクトクトク」という音、お気に入りのグラスの内面に垂れる黄金色に輝く足。「樽で眠っていた状態のモルトを何も足さず、取り除かずに瓶に詰めた」スコッチ・モルト・ウイスキー協会のシングルカスクボトルには、スコットランドの風土と作り手の英知までが封印されている。
● ● ● ●旦那愛飲の、お薦めのシングルモルト●
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フルボディーのしっかりしたドライ気味のモルトが好きだから、ハイランドのROYAL LOCHNAGAR(ロイヤル・ロホナガー)やスペイ川流域「緑の谷」に位置するGLENFARCLAS(グレンファークラス)が、愛好の品だ。スモーキーなフレーバーを約束する濃い琥珀色、味は、ややフルーティーまたはクリーミーな感じのかすかでふくよかな甘さ、ドライながら余韻が残る後味。水で割ってもしっかりとバランスを崩さない確かさ。こうしたモルトに出会う時は至上の喜びを感じてしまう。女将も好きな、女性でも飲みやすいものは、GLEN MORANGIE(グレンモーレンジ)、ABERFELDY(アバフェルディー)、BALVENIE(バルヴィニー)、少々重いがROYAL BRACKLA(ロイヤル・ブラックラ)あたりがお薦めだ。ビャクダンのような華やかな香、バニラやハニーナッツ、ラムレーズンのようなスイートな香、シナモンのようなスパイシーな香、フレッシュでフルーティーな柑橘系の香、上品で秀逸な香に包まれて、食後のひとときを過ごしてみてはいかがでしょう。
● ● ● ●シングルモルトの飲み方●
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グラスはチューリップ型の香をより感じるものを使いたい。旦那は女将から贈られたリーデル社のHANDMADEのシングルモルト用を愛用している。静かにグラスを回しながら、色を確かめ、鼻腔を広げ香を楽しむ。ニート(ストレート)でゆっくり味わう。次に水を半量加える。驚くことに大半のモルト・ウイスキーはこの瞬間に表情が激変する。この変化がまた楽しい。食前に楽しむもの。食事にあわせるもの。食後にゆっくり嗜むもの。読書をしながらナイトキャップで選ぶもの。キャンプの時など、愛用のハンティングフラスクにお好みを入れて行き、焚き火の前で飲むのも楽しみの一つだ。シングルモルトとの出会いは、お酒との付き合い方の幅を大きく広げてくれた。
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