旦那の居場所第45回 「生姜」礼賛

女将のダンナは「惣菜管理士」というあまり知られていない資格を持っている、 ただのサラリーマン。とにかく大の料理好き!・・で、このお店を間借りさせて あげることにしました。 名づけて「ダンナの居場所・・居酒屋のおやじを夢見て」。 これからも色々な素材を取り上げていきますのでお立ち寄りください。*この記事は1998~2005年に書かれています


仕事の関係でしばらくフィリピンに住んでおりましたが帰国しましたので「旦那の居場所」を久々に再開致します。 フィリピンでは食品の商品開発や販売を担当しており地元の料理を食べまくりました。 流石に島国、魚介類の豊富さとおいしさは日本のそれに劣らぬレベル、健康な環境で育った鶏、豚、山羊は深くてコクのある味わいでした。 シンプルな調理法が多いだけに、ニンニクやしょうがといった生薬系の香辛調味料が多用され、しょうが料理の旨さを堪能できます。 そこで再開第一弾は”しょうが”を思い切り礼賛したいと思います。

● ● ● ● しょうが、しょうが、しょうが 野菜かスパイスか ● ● ● ●


「しょうが」とは何か?野菜、スパイス、ハーブ、漢方薬、調味料、薬味。その正体は七変化である。生臭い魚や肉の臭い消しには欠かせない。 生姜に含まれる辛味の成分、ジンゲロール、ショウガオール、ジンゲロンの 3 種類が料理に独特の香りを与えてくれる。 みじん切り、せん切り、すりおろし、おろし汁、乾燥パウダーなどあしらい方もいろいろ。 しょうが飴、しょうが糖、ジンジャークッキーなどの菓子や冷やし飴、葛湯、ジンジャーティー、ジンジャーエール、ジンジャービールなど飲料にもなる。 紅しょうが、ガリ、はじかみ、谷中しょうが、しょうがの種類や食べ方によっても多彩な魅力を楽しめる。
:参考:ウィキペディア(Wikipedia)・永谷園生姜部

● ● ● ● 生姜の効能 ● ● ● ●

しょうがの抽出物を用いた実験により、しょうがの成分がエネルギー消費量をアップさせることがわかってきたという。 しょうが 20g 相当の摂取で、 1 時間後にはエネルギー消費量に約 10% の上昇がみられたというから驚き。 しょうがを食べる機会を無理なく増やすことで身体の体温を高めに維持し脂肪燃焼型の体質に変えていくことができれば 健康増進のための大きなベネフィット、冷え性の症状の緩和にもなるかも知れない。

我が家では毎朝、プレーンヨーグルトに「しょうがのハチミツ漬け」をかけて食べています。 作り方はとても簡単、しょうがを千切りにして保存瓶に入れ、ハチミツに浸しておく。 それをスプーンで、しょうがと一緒にハチミツをすくい、ヨーグルトにかける。 この他、チキンにマリネしてからローストしたり、ドレッシングに使ったり、パンケーキにかけたりとすごく便利。


● ● ● ● カレーの最高の隠し味 ● ● ● ●

欧風のカレーを作る時には、なるべく小さくみじん切りにしたしょうがとラッキョウをたっぷり入れてみてください。但しはあまり煮込まなくても大丈夫です。 格段に風味が増しますが、これに加えて、シャキシャキとした独特の食感が楽しめます。 試行錯誤の末に行き着いた簡単にできるカレーのパワーアップ方法、一度お試しあれ。


■■■ ・・ホントにうまい 生姜料理あれこれ・・ ■■■

「豚肉のしょうがあんかけ」

私の住んでいる町の最寄り駅近くにひっそりと昨年の5月に開店した中国料理店、その名は黒龍苑。 ハルピン出身の女将さんが作る点心や中華料理は絶品。 その店の人気料理「豚肉のしょうがあんかけ」、そんなに入れて大丈夫かなと思うくらいしっかり砂糖を入れるが お酢の酸味でこれが絶妙なバランスになる。しょうがの風味が五感をくすぐるから、ビールにも紹興酒にもご飯にもぴったり。
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豚肩ロースは一口大、7mmくらいの厚さにスライス、塩、コショウ、「中華あじ」、水でよくもみ、片栗粉をまぶす。 たっぷりのしょうがはせん切りにし、調味料は砂糖、醤油、水、酢をすべて同量の割合で合わせておく。 豚肉を低めの揚げ油で7分目まで火を通してから一度油を切り、今度は同じ鍋に合わせ調味料としょうがを入れて加熱し、 豚肉を戻し入れて絡め煮にして水溶き片栗粉でトロミをつける。 合わせ調味料は肉の半分以上(肉が400gなら1カップ以上)が目安。 水溶き片栗粉は粉の倍量の水で溶いておくと使いやすい。生肉に1割程度の水を抱かせるからジュシーで柔らなくなる。

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「菜の花と烏賊のにんにくしょうが炒め」

菜の花は歯ごたえを残した「お浸し」と相場が決まっていますが、くたくたになるまでオリーブオイルで炒めるとグンと甘みが増します。 にんにくとしょうがを効かせてよく混ぜるとオリーブオイルとうま味がエマルジョンを形成して混然一体、絵もいわれぬ味になります。
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菜の花はオリーブオイルと一緒に鍋で炒め、蓋をして焦がさないように蒸し煮にする。 火を止めたら、おろしたしょうがとにんにく、塩、コショウを入れ、オリーブオイルを足してよくかき混ぜる。 全体が冷めたら細く切った刺身用の烏賊を入れてさらによく混ぜる。 和える魚介はアオヤギ、ボイルして冷やしたホタル烏賊などでも抜群においしい。


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「チキン・ティノーラ」(Tinolang Manok)

フィリピンにはしょうがを効かせた料理がたくさんある。その1つは代表的なスープ料理、チキン・ティノーラ。 野菜と鶏肉のブツ切りをスープに仕立てたシンプルな料理だがその味わいは格別だ。 オリジンはおびただしい数の島で形成されるビサヤス地方だが、今でははフィリピン全土で食べられている。 本場のネグロス島あたりでは水の代わりにココナッツ水を使いやや甘口に仕上げるが、こうなると「チキン・ビナコル」と名前を変える。隠し味に魚醤を1滴たらすと更に味わい深い。 これに使う定番の野菜は青パパイヤか隼人ウリ、手に入らなければ冬瓜や大根でも代用可。 現地ではうま味補強のためにモリンガ(現地ではマルンガイ「母の親友」)をたっぷり入れ、魚醤を一滴たらす。
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骨付きのブツ切り鶏肉を大き目に切った、たっぷりのしょうがと一緒に軽く炒める。 ここに水を注ぎ、大き目に乱切りにした冬瓜(または大根)を入れて煮込む。 鶏肉からもどっさりダシが出るので味付けはシンプルに塩と味の素で十分。お手元に乾燥モリンガがあれば大さじ2を加える。 九州地方では隼人ウリ(フィリピンではサヨーテ)が手に入るのでこちらがベターです。 ご飯にもビールにも合うので4人家族なら鶏肉は800gくらいは食べてしまいます。それに対して水の量は1.2リットル程度。




今回はしょうがのおいしさについてでした。 しょうがはもともと熱帯アジアが原産で日本へは3世紀に渡来しました。奈良・平安時代には既に香辛料として使われていた記録が残っています。 低温流通・低温保存ができなかった時代に、魚好きの日本人にはなくてはならないスパイスだったのかも知れません。

不思議なことですが、東洋では塩味の料理に、西洋では砂糖味の料理に使われることが多いように思います。 繊維のあまりない上等なしょうがが手に入ると、これを薄切りにして、みりん、酒、しょうゆでじっくりと煮つけます。 これさえあれば、ご飯は何杯でも食べられるし、お酒もぐんぐんと進んでしまうというから、ホントにしょうがの 魅力とは不思議なものです。

2010年3月 本橋 弘治   copyright by Hiroharu Motohashi

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