店主の食卓

旦那の居場所第46回 「クレソン」礼賛

女将のダンナは「惣菜管理士」というあまり知られていない資格を持っている、 ただのサラリーマン。とにかく大の料理好き!・・で、このお店を間借りさせて あげることにしました。 名づけて「ダンナの居場所・・居酒屋のおやじを夢見て」。 これからも色々な素材を取り上げていきますのでお立ち寄りください。*この記事は1998~2005年に書かれています


ク レソンとの出会いは小学生の頃、デパートの最上階のレストラン街でハンバーグやポークソティーを注文すると 何やら見慣れない葉っぱがお皿にのって現れた。 ただの飾りに違いないと思いつつ一齧りしてみると、予想的中、苦さが口中に広がり、やっぱり食べられる葉っぱじゃあなかったと思ったものだ。

ところが、いつしかあのピリッとした苦さがたまらく好きになり、生でバリバリ食べるようになった。 それにしても、クレソンとはなかなかハイカラな名前、 スペルはCresson、すなわち仏語、だからマニラにいた時にはクレソンでは通じなかった。 意外にも英語ではウオータークレス(WATERCRESS)、あのかわいい丸みを帯びた葉を想うと、やはり名前は・・・、クレソンのほうがぴったりだ。

● ● ● ● 野生のクレソン ● ● ● ●

ク レソンはアブラナ科オランダガラシ属の多年草、浅い清流に茂る。もともとはヨーロッパに広く自生していたが、今では日本全土に帰化している。 水中では縦横無尽に根が張り、空洞の茎が四方八方に入り乱れる。 田舎のきれいな小川でクレソンを見つけると、思わず摘みあげて口に放り込んでみるや、口中に広がる香りと辛みを楽しむと、 文字通り、これもまた香辛料の一種だと一人で合点する。
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なるほど、肉の臭み消しのために、つけあわせとして供されるようになったのにもうなずける。 水面にたたわわに葉をたたえ、水上に鎮座する姿は、小さいながらもさわやかで力強い。


● ● ● ● クレソンの楽しみ方 ● ● ● ●

たおやかな、というより頼りなげなクレソン、意外にもビタミンA・C、鉄分、カリウムなどが豊富です。だから、肉のつけ合わせとして食するのは なんとも理に適っていると言える。元来は4~5月が旬だから、この時期には栄養価も高まるのかもしれない。 生のまま、サラダで食べるクレソンは、バリバリと噛みしめる歯ごたえと清らかな苦味が最高だ。 「おひたし」も美味い。さっと茹でて水気を切り、めんつゆと「ほんだし」を回しかければ完成だ。これにすりゴマを和えて「ごま和え」としても乙なもの。 手のこんだところでは、茹でてからピュレ状にして「ソース」や「スープ」に使う。肉にも魚にも野菜にも合うから驚きだ。 いずれにしても、値段が高いから、たっぷり使うには少々勇気のいる食材。お買い得品をみつけたら買い込んでしまう。

■■■ ・・ホントにうまい クレソン料理あれこれ・・ ■■■

「野芹とクレソンのバリバリ・トスサラダ」
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野趣には野趣を、香辛野菜には香辛野菜を、というコラボ。フレンチ系のドレッシングも可だが、 ここはあっさり和風のドレッシングで、野菜の辛さと苦さをダイレクトに楽しみたい。 だからドレッシングは手作りしたい。ノンオイルの和風ドレッシングは、酒とみりんを火にかけアルコールを飛ばしたら、 醤油を入れて馴染ませ火を止めて冷蔵庫で冷ます。ここに酢を混ぜて完成。分量は酒1:みりん1:醤油1:酢2の比率。 酸っぱいのがお好みなら酢を増やし、甘めが好きなら砂糖を少々加える。

セリとクレソンはそれぞれ3センチ程度、食べやすい大きさに切り、しっかり水気を切る。 大きめのボールの中で、少量のオリーブオイルを回しかけながら、油が全体に行き渡るようにしっかりトスする。 両手にそれぞれ、スプーンや菜箸を持ち、バレーボールでトスを上げるように葉っぱを持ち上げては落とすを繰り返す。 最小限の油で葉っぱの隅々までしっかりコーティング。これが美味さの秘訣だ。ここまで出来たら食べる直前まで冷蔵庫。 最後にノンオイルの和風ドレッシングをかけて完成。

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「すずきのムニエル クレソンのソース」
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クレソンのソースは肉にも魚にもよく合う。ソースの作り方は簡単。鍋1つとハンドミキサーで5分で仕上がる。 オリーブオイル、顆粒のコンソメ、こしょうを入れた少量の熱湯で刻んだクレソンを茹でたら そのままハンドミキサーでピュレ状にする。最後に少量の生クリームとバターを入れて味を調えるだけ。 塩味の調整だけ最後に、スープではなくソースなので、ややきつめの塩味で。実はこのソース、生のトマトとの相性が抜群です。 水気を拭いた白身の魚に塩、コショウ、にんにくを効かせ微量の小麦粉をまとわせオリーブで両面をこんがり焼く。 魚を皿に盛ったらクレソンのソースをかける。鍋に残った油にレモン汁を加えて混ぜ、これをお皿に余白に散らしても良いアクセントになる。


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「クレソンの塩スパゲティー」
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シンプルな味付けのパスタとクレソンだけの塩スパゲティー、大人の一品。 クレソンは少々小さめにざく切りして水気を切っておく。アルデンテに茹でたパスタをフライパンに移し、 オリーブオイルと茹で汁を入れて、加熱しながら手早く撹拌、これに少量のおろしにんにく、おろししょうが、「ほんだし」、塩、砂糖を加えて、 またまた手早く混ぜ合わせる。隠し味は少量の「ゆずこしょう」。火を止めクレソンを混ぜたら完成 我が家ではいつもモリンガの出し殻があるのでこれを加えて栄養を補強します。




今回はクレソンのおいしさについてでした。 クレソンは今から130年ほど前にヨーロッパから渡来しました。明治維新後の日本では肉食も始まり、生活の洋風化が上流層から始まった、そんな矢先の頃だったのだと思います。 もともと、苦い春野菜の多い日本の風土ですから、クレソンの味は意外と抵抗なく受け入れられたのかも知れません。「水芥」という字を当てたようですが、なんとも粋な名前でしょうか。

しかし、スーパーの野菜売り場でのクレソンの存在感を見るにつけ、家庭でクレソンを食べる頻度はそう多くはないと思われます。 ハウス栽培で一年中手に入る便利さは良いとして、やはり、あの値段の高さが普及が進まない1つの理由だと感じます。 ほんの1握りの束で高い時には200円以上、セリや三つ葉に比べてもg比では3-4倍はしていると思うのです。

マニラではなんとビニール袋いっぱいで100円以下でした。そんな露地物のクレソンが茂る綺麗な小川が日本中の 山里にもいつか戻ってくる日を心待ちにしつつ、今日も特売のクレソンを期待して野菜売り場をさまようというから、 ホントにクレソンの魅力とは不思議なものです。

2010年4月 本橋 弘治 copyright by Hiroharu Motohashi

旦那の居場所第45回 「生姜」礼賛

女将のダンナは「惣菜管理士」というあまり知られていない資格を持っている、 ただのサラリーマン。とにかく大の料理好き!・・で、このお店を間借りさせて あげることにしました。 名づけて「ダンナの居場所・・居酒屋のおやじを夢見て」。 これからも色々な素材を取り上げていきますのでお立ち寄りください。*この記事は1998~2005年に書かれています


仕事の関係でしばらくフィリピンに住んでおりましたが帰国しましたので「旦那の居場所」を久々に再開致します。 フィリピンでは食品の商品開発や販売を担当しており地元の料理を食べまくりました。 流石に島国、魚介類の豊富さとおいしさは日本のそれに劣らぬレベル、健康な環境で育った鶏、豚、山羊は深くてコクのある味わいでした。 シンプルな調理法が多いだけに、ニンニクやしょうがといった生薬系の香辛調味料が多用され、しょうが料理の旨さを堪能できます。 そこで再開第一弾は”しょうが”を思い切り礼賛したいと思います。

● ● ● ● しょうが、しょうが、しょうが 野菜かスパイスか ● ● ● ●


「しょうが」とは何か?野菜、スパイス、ハーブ、漢方薬、調味料、薬味。その正体は七変化である。生臭い魚や肉の臭い消しには欠かせない。 生姜に含まれる辛味の成分、ジンゲロール、ショウガオール、ジンゲロンの 3 種類が料理に独特の香りを与えてくれる。 みじん切り、せん切り、すりおろし、おろし汁、乾燥パウダーなどあしらい方もいろいろ。 しょうが飴、しょうが糖、ジンジャークッキーなどの菓子や冷やし飴、葛湯、ジンジャーティー、ジンジャーエール、ジンジャービールなど飲料にもなる。 紅しょうが、ガリ、はじかみ、谷中しょうが、しょうがの種類や食べ方によっても多彩な魅力を楽しめる。
:参考:ウィキペディア(Wikipedia)・永谷園生姜部

● ● ● ● 生姜の効能 ● ● ● ●

しょうがの抽出物を用いた実験により、しょうがの成分がエネルギー消費量をアップさせることがわかってきたという。 しょうが 20g 相当の摂取で、 1 時間後にはエネルギー消費量に約 10% の上昇がみられたというから驚き。 しょうがを食べる機会を無理なく増やすことで身体の体温を高めに維持し脂肪燃焼型の体質に変えていくことができれば 健康増進のための大きなベネフィット、冷え性の症状の緩和にもなるかも知れない。

我が家では毎朝、プレーンヨーグルトに「しょうがのハチミツ漬け」をかけて食べています。 作り方はとても簡単、しょうがを千切りにして保存瓶に入れ、ハチミツに浸しておく。 それをスプーンで、しょうがと一緒にハチミツをすくい、ヨーグルトにかける。 この他、チキンにマリネしてからローストしたり、ドレッシングに使ったり、パンケーキにかけたりとすごく便利。


● ● ● ● カレーの最高の隠し味 ● ● ● ●

欧風のカレーを作る時には、なるべく小さくみじん切りにしたしょうがとラッキョウをたっぷり入れてみてください。但しはあまり煮込まなくても大丈夫です。 格段に風味が増しますが、これに加えて、シャキシャキとした独特の食感が楽しめます。 試行錯誤の末に行き着いた簡単にできるカレーのパワーアップ方法、一度お試しあれ。


■■■ ・・ホントにうまい 生姜料理あれこれ・・ ■■■

「豚肉のしょうがあんかけ」

私の住んでいる町の最寄り駅近くにひっそりと昨年の5月に開店した中国料理店、その名は黒龍苑。 ハルピン出身の女将さんが作る点心や中華料理は絶品。 その店の人気料理「豚肉のしょうがあんかけ」、そんなに入れて大丈夫かなと思うくらいしっかり砂糖を入れるが お酢の酸味でこれが絶妙なバランスになる。しょうがの風味が五感をくすぐるから、ビールにも紹興酒にもご飯にもぴったり。
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豚肩ロースは一口大、7mmくらいの厚さにスライス、塩、コショウ、「中華あじ」、水でよくもみ、片栗粉をまぶす。 たっぷりのしょうがはせん切りにし、調味料は砂糖、醤油、水、酢をすべて同量の割合で合わせておく。 豚肉を低めの揚げ油で7分目まで火を通してから一度油を切り、今度は同じ鍋に合わせ調味料としょうがを入れて加熱し、 豚肉を戻し入れて絡め煮にして水溶き片栗粉でトロミをつける。 合わせ調味料は肉の半分以上(肉が400gなら1カップ以上)が目安。 水溶き片栗粉は粉の倍量の水で溶いておくと使いやすい。生肉に1割程度の水を抱かせるからジュシーで柔らなくなる。

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「菜の花と烏賊のにんにくしょうが炒め」

菜の花は歯ごたえを残した「お浸し」と相場が決まっていますが、くたくたになるまでオリーブオイルで炒めるとグンと甘みが増します。 にんにくとしょうがを効かせてよく混ぜるとオリーブオイルとうま味がエマルジョンを形成して混然一体、絵もいわれぬ味になります。
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菜の花はオリーブオイルと一緒に鍋で炒め、蓋をして焦がさないように蒸し煮にする。 火を止めたら、おろしたしょうがとにんにく、塩、コショウを入れ、オリーブオイルを足してよくかき混ぜる。 全体が冷めたら細く切った刺身用の烏賊を入れてさらによく混ぜる。 和える魚介はアオヤギ、ボイルして冷やしたホタル烏賊などでも抜群においしい。


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「チキン・ティノーラ」(Tinolang Manok)

フィリピンにはしょうがを効かせた料理がたくさんある。その1つは代表的なスープ料理、チキン・ティノーラ。 野菜と鶏肉のブツ切りをスープに仕立てたシンプルな料理だがその味わいは格別だ。 オリジンはおびただしい数の島で形成されるビサヤス地方だが、今でははフィリピン全土で食べられている。 本場のネグロス島あたりでは水の代わりにココナッツ水を使いやや甘口に仕上げるが、こうなると「チキン・ビナコル」と名前を変える。隠し味に魚醤を1滴たらすと更に味わい深い。 これに使う定番の野菜は青パパイヤか隼人ウリ、手に入らなければ冬瓜や大根でも代用可。 現地ではうま味補強のためにモリンガ(現地ではマルンガイ「母の親友」)をたっぷり入れ、魚醤を一滴たらす。
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骨付きのブツ切り鶏肉を大き目に切った、たっぷりのしょうがと一緒に軽く炒める。 ここに水を注ぎ、大き目に乱切りにした冬瓜(または大根)を入れて煮込む。 鶏肉からもどっさりダシが出るので味付けはシンプルに塩と味の素で十分。お手元に乾燥モリンガがあれば大さじ2を加える。 九州地方では隼人ウリ(フィリピンではサヨーテ)が手に入るのでこちらがベターです。 ご飯にもビールにも合うので4人家族なら鶏肉は800gくらいは食べてしまいます。それに対して水の量は1.2リットル程度。




今回はしょうがのおいしさについてでした。 しょうがはもともと熱帯アジアが原産で日本へは3世紀に渡来しました。奈良・平安時代には既に香辛料として使われていた記録が残っています。 低温流通・低温保存ができなかった時代に、魚好きの日本人にはなくてはならないスパイスだったのかも知れません。

不思議なことですが、東洋では塩味の料理に、西洋では砂糖味の料理に使われることが多いように思います。 繊維のあまりない上等なしょうがが手に入ると、これを薄切りにして、みりん、酒、しょうゆでじっくりと煮つけます。 これさえあれば、ご飯は何杯でも食べられるし、お酒もぐんぐんと進んでしまうというから、ホントにしょうがの 魅力とは不思議なものです。

2010年3月 本橋 弘治   copyright by Hiroharu Motohashi

旦那の居場所第44回 「白子」( しらす)礼賛

女将のダンナは「惣菜管理士」というあまり知られていない資格を持っている、 ただのサラリーマン。とにかく大の料理好き!・・で、このお店を間借りさせて あげることにしました。 名づけて「ダンナの居場所・・居酒屋のおやじを夢見て」。 これからも色々な素材を取り上げていきますのでお立ち寄りください。*この記事は1998~2005年に書かれています


しらす、ちりめん、じゃこ、子女子、かえり・・・「おそらく同義語だ!」と思って使っている単語の違いを言い当てるのは難しい。

「しらす」とはカタクチイワシやマイワシの稚魚、白く透明だから「白子(しらす)」という。これを塩水で茹でて軽く乾したものを白子干し。この「白子干し」が、関西では「ちりめんじゃこ」と名前を変える。「ちりめんじゃこ」とは「縮緬雑魚」の意。なんとも言い得て妙なネーミングだ。

「白子干し」と「ちりめんじゃこ」、元来は同じものを別名で呼んでいたに過ぎないわけだが、一般に、関東では水分の多いものが好まれ、関西ではよく乾燥したものが食されるので、スーパーなどでは、乾燥の度合いによって、この2つの名称を使い分けているようだ。「かえりちりめん」は「ちりめんじゃこ」の少し大きいもの、少し大きくなって帰ってきたお兄さんのこと。「子女子」は「イカナゴ」の子供。いずれにしも稚魚を大量に捕獲し塩水で茹でて乾燥させる、いわゆる「煮干し」の一種というわけだ。

● ● ● ● 白いご飯にしらすを山盛り ● ● ● ●

炊きたてのご飯に、しらすを山盛りにかけてざっと胃袋に流し込む。なんとも幸せな一瞬だ。しらすの白さがご飯の白さに同化して、それを一緒に口に放り込めば、口の中では、ご飯の柔らかさがしらすの柔らかさと同化する。ご飯としらすが同居する茶碗の中は真っ白だが、成長すればくりくり目玉になるはずだった小さな瞳たちだけが、かすかなシミのように残っている。真っ白で柔らかなしらす干、それはカルシウムたっぷりの小さな命が凝縮された少ししょっぱい海からの贈り物だ。


● ● ● ● 生しらすのうまさに絶叫 ● ● ● ●

獲れたばかりの生しらすの味は絶品だ。流通と保存が発達した今では東京でもその味が楽しめる。房総、相模湾、駿河湾、紀伊半島、瀬戸内、日本各地から、WEBでも簡単に取り寄せが可能だ。釜揚げにしたものより、甘味とうま味が強く、タオヤカで柔らかな、上品この上ないうまさ。絶叫しながら食べ続ければ、500gくらいはあっという間に食べてしまう。ご飯によし、酒の肴によし。ああ、いかにも島国ならではの贅沢だ。

● ● ● ● しらすのうまい食べ方は ● ● ● ●
 
やはりしらす干しはご飯との相性が抜群だ。じゃこご飯やおにぎりなど、何杯でも食べられるからご用心。柔らかい旬のグリンピースで豆ご飯をつくり、炊きあがりにたっぷりじゃこをかけて混ぜる。
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至高のうまさに、口の中では味蕾たちが感激している様子が、わかるくらいだ。大根おろしには何故かしらすが付き物だが、これをうまいと感じたことがない。大根おろしの食感としらすの食感は相性が良いとは思えないし、それぞれの美味さをひきたて合う相乗効果も感じられない。醤油などかけようものなら、しらすの風味も消え失せ水っぽさと臭いが気になりはじめる。
どうしてもこれを食べねばならぬなら、少量の酢をかけると両者がたちどころに調和する。塩加減も味わいも上品で柔らかいだけに、個性の強い相方を必要としないのがしらす干しの身上だ。なるべくシンプルに、その味を楽しみたい。 じゃこ・ピーマンご飯


■■■ ・・ホントにうまい しらす料理あれこれ・・ ■■■


ちりめん山椒と獅子唐の相性は最高。シンプルだが某高級割烹の名物料理だ。ここで修行した四国の有名割烹のご主人に教えて頂いたこの料理に、家庭でも失敗しないよう工夫を加えた。酒によし、酒の後のご飯の友によしの「獅子唐とちりめんの山椒炊き」
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山椒の佃煮と柔らかいちりめん(しらす干し)を鍋に入れ、少量の酒と醤油でさっと煎り付け、ちりめん山椒を作る。甘さが足りなければ砂糖でなく、みりんを少量足す。「ちりめん山椒」は高価だが市販のもの(瓶詰めやパック詰め)でも良い。
獅子唐は洗って斜めに小口切。別の鍋にごま油を少量入れて馴染ませ、食感を残して炒める。獅子唐を、ちりめん山椒の鍋に入れて、よく絡ませて出来上がり。(混ぜた後に加熱しないのが失敗しないコツ)


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長女が保育園のおやつで食べて覚えてきた、スペシャルにおいしい「じゃこトースト」。そのおいしさに感動した彼女は栄養士の先生に作り方を聞いてきたらしく、我が家に友達が来る日に手際よく作って、喝采を浴びていた。
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食パンを4つ切りにしてトースト。表面に生卵の黄味を塗り、じゃこを散らして、もみのりをかける。どちらもうまいが、「しらす干し」より水分の少ない「ちりめんじゃこ」の方が野趣がある。写真は旬の柔らかい「子女子」を使用。

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ごま油とほのかな塩味の取り合わせは、後をひくうまさだ。比較的個性のない素材同士をごま油の風味でまとめた絶妙な和え物を一品。「黄にらとえのき茸のしらす和え」
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鍋に湯を沸かし、切りそろえた、えのき茸と黄にらを入れ、すぐに水にさらす。茹で過ぎは禁物。湯通し程度で。えのき茸のぬめりがすっかりなくなるまで水にさらして、ざるに取り十分に水気を切り、冷蔵庫で冷やす。食べ際にしらすを入れて、ごま油でよく和える。塩気はしらすから出るが足りなければ、アジシオを一振りする。




旦那の居場所、今回は「白子(しらす)干し」のおいしさについてでした。
早く目覚めた土曜日の朝は念入りに米をとぎ、タイマーをセットして築地に車でひとっ走り。 場外にある「コナシ」は「しらす」や「子女子」の専門店。白い割烹着を着たおばさん達が産地や色、大きさの違うシラス達を手早く 量っては、袋に詰めてシールしてくれます。 炊きたての白いご飯に山盛りのしらすを想像して、思わずハンドルを握りながら涎を垂らしてしまうというから、ほんと「白子(しらす)干し」の魅力とは不思議なものです。


(03年4月 copywright hiroharu motohashi)

旦那の居場所第43回 「ピーマン」礼賛

女将のダンナは「惣菜管理士」というあまり知られていない資格を持っている、 ただのサラリーマン。とにかく大の料理好き!・・で、このお店を間借りさせて あげることにしました。 名づけて「ダンナの居場所・・居酒屋のおやじを夢見て」。 これからも色々な素材を取り上げていきますのでお立ち寄りください。*この記事は1998~2005年に書かれています


ピーマンのうまさがわかるようになるまでには、人生として少々の時間を要するようだ。しかも、一時期、「その話ピーマン」とか「あの男ピーマン」なんて良くない流行言葉にも使われた。「ピーマンのように中身がない」ことの例え通り、この野菜、中は空洞だ。しかし、侮るなかれ!見てくれと違い、付き合えば付き合うほどに、味のある奴だとわかる、奥の深い野菜なのだ。


● ● ● ● ピーマン 買う勇気 楽しむ勇気 ● ● ● ●

家庭ではどんな料理にピーマンを使うことが多いだろうか。この野菜、何にでも使える常備菜というわけではないようだ。肉詰め、炒め物、チキンライス、てんぷら、用途は比較的限られる。一袋に4~5個入って売られていることが多いが、何に使うか、決めてからでないと手が出しにくい野菜の1つだ。ほのかな苦味と渋味、そして独特の青臭さ。子供が食べられない野菜の代表選手ときている。ピーマン?なんて我が家では買ったことがない!というご家庭もあるのではないか。さあ、今回は敢えてこのピーマンの魅力を掘り下げつつ、思いっきり楽しんでみたい。


● ● ● ● ピーマンの色めく時 ● ● ● ●

あの苦くて青臭いピーマンが燦然と輝き色めき立つ、うまい食べ方を考えたい。僕の最も好きな食べ方は刺身だ。その名も「ピー刺し」。新鮮な奴をさっと洗って種を取り、「アジシオ」をさっと振って食べる。何故か味付けは「アジシオ」に限る。齧りつけばシャキっとした音とともに、口中に青臭いジュースがほとばしる、これが堪らなくうまい。もちろん、さっと網で焼いても良く、ビール、サワー、ホッピーあたりとの組合せはもう最高。


青臭さが嫌いでなければ塩もみもうまい。生のピーマンを塩でもみ、かつおぶしや塩こぶなどと和える。新しょうがの漬物やゆかりとまぶしてもいとをかし。紹興酒に漬けたり糠漬けでもまたOK。


それから、この野菜、油との相性が抜群だ。炒めることで甘みが増し、油の効果で独特の臭みも消える。だから、てんぷらもうまいし、炒め物(青椒肉絲が代表だ)などしめたものだし、どうしてどうして油味噌にするのがうまい。油味噌は茄子で作るより、滋味深く格調高い逸品が出来上がる。ということは、味噌や砂糖との相性も良いということ。


それに、もともと辛くないトウガラシがピーマンと呼ばれるようになったわけで、香辛料的使い方はバッチリだ。みじん切りをサラダやピラフに入れたり、輪切りをピザに載せたりするだけで、料理がパッと色めくほどにうまくなる。カレーやカポナータ(仏ではラタトゥイユ)には欠かせない脇役だ。


● ● ● ● いろいろなピーマンを試してみると ● ● ● ●

イタリアンレストランで大きくて真っ赤なピーマンを初めて食べた時の感動は忘れない。赤や黄色、オレンジのこの外来種のジャンボピーマンは、「ピメント」等と称して、出はじめはとても高価でオシャレなピーマンだった。アジアからの輸入モノがスーパーに並んでからは、値段も買いやすくなり、最近では、水耕栽培やバイオもの、ビタミンやカロチンが多い珍種も出回り、ピーマンバラエティーは急拡大だ。

イタリアンのブームがけん引役としては大きいが、料理本や料理番組などでも盛んに使われるようになり、あっという間に家庭にも広まった。赤や黄色のこのピーマン、肉厚で、しかも完熟しているから甘みが強い。従来の中果種の緑ピーマンよりもずっと用途は広いといえるだろう。

■■■ ・・ホントにうまいピーマン料理あれこれ・・ ■■■


油に砂糖、ナッツ類と、ピーマンとは相性の良いものを組み合わせて、最高のお茶受けを作る。もちろん、ウイスキーやビールにだって合う「ピーマンとくるみの飴炊き」
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ざく切りまたは輪切りのピーマンはゴマ油でさっと炒め皿に取る。鍋に多めにゴマ油を熱し、ザラメ糖(なければグラニュー糖でも普通の上白糖でもよし)を油で溶かし飴を作る。
これにくるみ、ピーマンを入れてさっと加熱しながらよく混ぜる。

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大果種のピメント(ジャンボピーマン)にはオリーブオイルとチーズがよく合う。くし切りのピーマンをゴンドラに見立ててオーブンで焼く、「赤ピーマンのベネチア風」。ゴンドラの中では相性の良いアンチョビとモッツァレラがマリアージュ。ゴンドラだけにベネチア風とネーミング。
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赤ピーマンは1個から8~12切れ程取れるよう、くし切にする。さっと塩とオリーブオイルをかけてオーブンで下焼き。
歯応えを残して取り出し、アンチョビ(フィレならピーマンのゴンドラ一艘に一枚ずつ)、モッツァレラを載せて更にオーブンへ。
チーズが溶けたら出来がり。最後にラディッシュで漕ぎ手のための赤い帽子を飾りつけ。

写真の一番下のピーマンはアンチョビだけを載せた状態。もちろんこれだけでもうまいが、やはりモッツァレラとの相性は良い。アンチョビのほかにはスモークサーモンやベーコンなどでもOK。ピメントの甘さが引き立つためには、少々塩が効いているものが合うようだ。


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青椒肉絲は牛肉や豚肉よりもピーマンが主役だ。ピーマンの緑の色めきと歯応えが堪らない。 冷めてもうまい青椒肉絲なら牛タンを使うことをお勧めする。ピーマンの香りと味わいを活かすべく味付けはシンプルに。 塩と胡椒だけで仕上げる「青紅椒牛舌絲」
チンジャオロースー
 
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中果種の緑赤黄のピーマンを千切りに。牛タンは塊を求めて自分でカット。5~6mmの棒状に切り揃える。
少々贅沢にクラウンカットの芯の部分だけを使いたい。タンの下味は塩胡椒、少量の酒・醤油・しょうが。よく肉にもみこみ最後に片栗粉。
少量のお湯に粉末の鶏ガラスープ、塩を溶かしておく。水:片栗粉=1:1で少量の水溶き片栗粉も用意。
中華鍋を十分に熱しピーマンをさっと炒める。早めに取り出し、鍋肌が少し冷めたらしょうがのみじん切りをゆっくり炒め、強火にしたら牛タンを投入。
火が通ったらピーマンを戻しスープを入れてひと混ぜ。すぐに水溶き片栗粉を入れてとろみをつけて皿に盛る。黒胡椒をこれでもかという位に挽いてかける。



旦那の居場所は、なんと4ヶ月ぶりの再開でした。外食商品担当の営業を離れて、はや2年半。日々料理に接し料理のことを考えていないと、おいしい料理のアイディアは枯渇するものです。充電期間を経ての第一弾は「ピーマン」のおいしさを礼賛しました。
トウガラシと同種のピーマン、だから英語ではSweetPepper、ピーマンの語源も仏語のトウガラシを意味するPimentから派生した。

油と一緒に食べるとおいしいが、カロチンいっぱいだからとても理に適った食べ方といえる。育て方も簡単、苗を手に入れればベランダでも収穫できる。ビタミンも豊富だから酒を飲み飲みかじるのも案外良い食べ方なのかも知れない。

我が家では来客の時には決まってピメントのマリネを作る。レンジかオーブンで表面を焼き皮を向いたら、ビネガー・ローリエ・塩・胡椒のマリネ液に漬けておく。マリネ液は加熱などしなくて良いからビニール袋ですべてが完成してしまう。オリーブオイルをさっとかけた、赤・オレンジ・黄、鮮やかなピーマンが盛り皿に並べば、それだけで食卓が賑わいでしまうから、ホント「ピーマン」の魅力とは不思議なものです。

(03年2月 copywright hiroharu motohashi)

旦那の居場所第42回 「人参」礼賛

女将のダンナは「惣菜管理士」というあまり知られていない資格を持っている、 ただのサラリーマン。とにかく大の料理好き!・・で、このお店を間借りさせて あげることにしました。 名づけて「ダンナの居場所・・居酒屋のおやじを夢見て」。 これからも色々な素材を取り上げていきますのでお立ち寄りください。*この記事は1998~2005年に書かれています

ニンジンといえば、いつもニンジン人参目当てに疾走するTV漫画のうさぎを思い出す。小学生の時分、野生のうさぎを小学生時代にうさぎを裏庭で飼ったことがある。警戒心の強いこの野生のうさぎにえさをやるのに苦労した。生のニンジンをそっと金網から差し入れて食べさせる。長いこと小屋の前にしゃがんでは一緒にニンジンをバリバリ食べたものだ。怯えた動物にえさをやる場合は、まずそのえさを自分が食べてみせるに限る。小学生の僕は本気でそう考えていた。

● ● ● ● 人参のうまさの秘密 ● ● ● ●

ニンジンのうまさは、自然で慎ましく、素朴で深い甘さにある。ニンジンの甘さを引き立てるには、オレンジ等の柑橘系の酸味や、牛肉やバターなどの動物性脂肪がうってつけだ。肉質は緻密で、生で食せば「バリバリ」、煮ると「ほっこり」と柔らかくなり、変化が楽しめる。外側は色の濃い肉部、内側が少し白い心部で、心部は硬く味も落ちるような気がする。ニンジンの香りは独特で、これはもう「人参臭さ」としか例えようが無い。土臭さも気になることがある。この臭さが苦手という方は、丸ごとさっと蒸すとかなり和らぐ。蒸すことで、水分と一緒に臭いも飛散するように思う。しかし、ニンジン好きは、この風味が堪らないわけで、生で齧った時の風味は最高だ。


● ● ● ● ニンジンの料理法アレコレ ● ● ● ●

ニンジンの一番好きな食べ方は糠漬けだ。生ニンジンのバリバリッとした食感はそのままに、臭さが抜け甘味が増す。生といえば繊切りにしてそのままドレッシングで和えたり、塩もみして胡麻和えにして食べても美味い。繊切りは、半生程度の過熱加減でコンソメスープの浮き身としてもうまい。植物油脂との相性も良いので、ごま油やオリーブオイルで和えたり、炒めても合う。均一に火が通り味が染みたニンジンも最高で、スープ、シチュー、煮物などじっくり加熱する料理は本当に多い。

橙色の西洋種はオールマイティー、アジア型の紅色の京にんじん(金時)は、やはり煮物などの和食に合うように思う。ペースト状にしてスープやソースにしたり、ドゥーに混ぜてニンジンパンを焼いてもうまい。関西では、人参菜もよく見かける。若いニンジンの葉そのもので、スーパー等でごく普通に手に入る。せり科だけに葉の様子はせりかハーブかという感じ。おひたしやサラダ、和え物等、用途は広い。

● ● ● ● 「ニンジン」の個性と相性 ● ● ● ●

ニンジンは本当に面白い野菜だ。購入頻度は極めて高く、食卓にのぼる回数も多い。しかし悲しいかな、メイン食材にはなり得ない。キャロットスープ、キャロットジュース等、ニンジンメインのメニューもあるが、これとて、決してニンジン100%ではない。ニンジンだけでは風味が強すぎる一方で、味が単調で飽きやすい。洋の東西を問わず面白いことは、複数の素材の間を取り持つ緩衝材として、ニンジンを利用していることだ。風味の点では、でしゃばらない味と自然な甘味で、素材と素材をつなぎ止めたり、つけ合わせとしてメインの料理を引き立てたりする。食感という点でも、「ほっくり」や「しんなり」した柔らかさで全体をまとめる役割を果たしている。

例えば「きんぴらごぼう」も、ニンジンが入ることで、食べやすくなり、ごぼうの食感も引き立つ。炊き込みごはんや散らし寿司、カレーやシチュー、グラッセ等のつけ合わせ等、風味や食感の点で、こうした役割をニンジンが果たしている料理はたくさんあると思う。もう一つ食感がしっくり来ない、色目がさびしい、風味がまとまらない、こんなときはニンジンを加えると満足できる料理に生まれ変わること請け合いだ。奥ゆかしくも、なんと頼りになることか、ああ、うまいかな、ニンジン。


■■■ ・・ホントにうまい人参料理あれこれ・・ ■■■


ニンジンは胡麻との相性が何故か良い。ごまの持つ風味がニンジン独特の臭みを消し、
胡麻の甘味とにんじんの甘味が馴染んでうまさ倍増となる。「ごま人参サラダ」は、酒の肴に、ごはんの友に、栄養バランス完璧の一品。
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ニンジンとレンコンを同じ大きさ、同じ厚さにスライス。レンコンは酢水に放つ。水気を切り、ニンジン、レンコンの順のごま油で炒める。
レンコンはしゃきしゃきに、ニンジンはしんなりするまで火を通す。市販のシャブシャブのたれ(ごまだれ)で和え、黒胡麻を軽くあたりまぶす。
レンコンは予想以上に火の通りが早いし、ニンジンはなかなか柔らかくならない。時間差炒めに自信がなければ別々に炒めて最後に合わせると失敗しない。バランスとして、レンコンよりニンジンを多めに使うとうまい。

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何人か集まり、「さあワインでも抜こうか!」という時に冷蔵庫からさっと食卓へ直行できる楽しいおつまみ。彩りも良し、歯応えも良し、お酒との相性も良し(特に白ワインがお薦め)の「ニンジンのごろっとマリネ」。何よりも簡単だから良い。
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皮を剥いたニンジンを丸ごと歯応えを残す程度に蒸して大胆にカットし、ビニール袋に入れ市販の浅漬けの素につける。(2時間程度で充分)あとは皿に盛り付けるだけ。そのまま食べても良し。ソースやハーブと合わせても良し。
バジルペーストをオリーブオイルで伸ばしたソースなどが組み合わせとしてGOOD!ベビーキャロットで作っても可愛くて楽しい。それでも、簡単だからと手を抜かず、お客様に出す前に味見はちゃんとすること。

 


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ニンジンは牛肉との相性が抜群。肉の甘味やうま味を引き立てる。食感のコントラストも良く、食べて飽きない。また、ブラウン系のソースとの相性もよいから、ビーフシチューやハヤシライスには、やはりニンジンは欠かせない。相性の良いものだけを組み合わせた、まさに「いいとこどり」の「牛うす切り肉のニンジンシチュー」
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ニンジンは丸ごと蒸し、棒状に切る。(または棒状に切ってから電子レンジで加熱)
歯応えを残すようにオリーブオイルでさっと炒める。味付けは胡椒と塩。
牛肉のうす切り(廉価なものでよい)を適当な大きさに切り、塩コショウ、酒(または白ワイン)で揉み、片栗粉をまぶす。
フライパンでオリーブオイル、にんにくを熱し牛肉をさっと炒め取り出しておく。
同じ鍋に少量の水を入れ市販のビーフシチューのルー(缶や粉末のデミソースやハヤシライスのルーでも良い)を溶かし固めのシチューを作る。
シチューに肉を戻して絡めるように和え、皿に牛肉のシチューを盛り、にんじんを大胆に散らせば完成。 (写真のつけ合わせは、カッペリーニを短くちぎり、30秒ほど煮てから、水気を切り、オリーブオイルで炒めたもの。胡椒とバジルの風味を効かせる。バリバリとした食感が後をひく。)


 


旦那の居場所、今回は「人参(にんじん)」のおいしさについてでした。 ニンジンの濃い橙色はカロチン色素の色。この野菜はビタミンAのかたまりだ。ビタミンB類やCも含み、微量栄養素の宝庫といえる。カロチンは脂溶性ビタミンだから油脂と一緒に摂ると効率的にビタミンAが摂取できるという。


この綺麗な橙色ゆえに、ニンジン程飾り切りに使われる野菜は無いだろう。中国料理では、縁起の良い動物に細工されることが多いし、 日本料理では紅葉や桜の花の形に抜かれ、煮物など色の暗い料理に彩りを添える。 フレンチのシェフからニンジンのシャトー剥きを徹底的に教えて頂いたことがある。ペティナイフでラグビーボールのような綺麗な流線型の形にニンジンの面取りをするこの作業。 形の美しさだけではなく、均整の取れたトゥルナージュ(面取り)は、ベストな加熱調理の条件でもあるわけで、 普段何気なく口にしている付け合せにもプロの技が生きていることを実感した。


それにしても「肉じゃが」「筑前煮」「カレーライス」・・。不思議とお袋の味を思わせる料理には、必ずと言っていい程ニンジンが使われている。 今日の弁当のおかずは何かな?なんて蓋を開ければ、お煮しめの中に鎮座する真っ赤な京にんじん。ついつい最後まで食べずに残しておいてしまうというから、ほんと「人参(ニンジン)」の魅力とは不思議なものです。

(02年10月 copywright hiroharu motohashi)

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